婦人科疾患

膣外陰炎・性感染症

帯下の増量や異臭、外陰部のかゆみ、痛み、イボ、しこりなどがありましたら、できるだけ症状があるうちに受診して下さい。

 

細菌性膣症

通常は、膣内には善玉菌がいるため、雑菌が侵入してもあまり症状は認めませんが、抵抗力の低下、外陰部の不衛生(とくにシャワートイレの不適切な使い方)などにより、帯下の増量や異臭、外陰部かぶれなどをきたすことがあります。5日間ほどの連日通院で、膣洗浄および抗生剤(クロマイ膣錠、フラジール膣錠)の挿入が必要になります。また、通院が困難な場合にはフラジール内服薬(1日2錠7日間)を処方する事もあります。

 

萎縮性膣炎

閉経後、女性ホルモンの低下により、外陰部や膣が乾燥し、萎縮し、膣内の善玉菌も減ってきます。このような状態を萎縮性腟炎といい、外陰部の違和感や帯下を認めることがあります。60歳までの方には一般的なホルモン補充療法を行うことが多いですが、当院では60歳以上の方には、より副作用の少ないエストリオール製剤(エストリオール内服薬、エストリール膣錠)を使用しております。

 

外陰・膣カンジダ症

カンジダはカビの一種で、半常在菌と言われています。抵抗力の低下、抗生剤の長期間服用、糖尿病などの全身疾患などによりカンジダが増殖し、強いかゆみやチーズ様の帯下をきたすことがあります。抗真菌外用剤(フロリードクリーム)の塗布と5日間の膣洗および抗真菌薬(フロリード膣錠)の挿入が望ましいですが、通院できない場合は、別の抗真菌薬(イソコナゾール膣錠2個)を挿入することがあります。尚、治療中は性交渉はもたず、外陰部は石鹸で洗わないようにしましょう。

 

クラミジア頸管炎

性感染症の中で一番多く、帯下や下腹部痛を来たすこともありますが、多くは無症状です。気づかないうちに肝臓周囲に膿瘍を形成したり、不妊や異所性妊娠の原因になることがあります。子宮頚管の帯下を採取しクラミジアPCRを調べて、診断します。クラミジア感染の治療には、抗生剤(ジスロマック1回4錠)の服用が有用ですが、パートナーも泌尿器科で検査してもらい、お互いプラミジアが治癒したことを確認するまでは、あらゆる性行為はもたないでください。

 

尖形コンジローマ

外陰部から肛門周辺にかけて、数mm程度のイボ(乳頭状、鶏冠状)を認めた場合、尖形コンジローマの可能性があります。性行為によるヒトパピローマウイルス6型・11型の感染で、痛みを感じることは少なく、気づかないうちに増殖していることがあります。治療にはコンジローマ治療クリーム(ベセルナクリーム)を用います。パートナーも泌尿器科での診療が必要です。尚、分娩時に尖形コンジローマが認められた場合は、新生児に感染する可能性が高いため、帝王切開となります。

 

性器ヘルペス

単純ヘルペスウイルスによる性感染症で、初感染の場合は外陰部の水疱、潰瘍が著明で、疼痛はかなり強く、排尿が苦痛であることが多いですが、再発の場合は症状が一般的に軽いです。抗ヘルペス薬の内服薬(バルトレックス1日2錠など)と外用剤(アラセナA軟膏など)で軽快することが多いですが、抵抗力の低下などにより再発することも少なくありません。頻回に再発する場合には、ヘルペス再発抑制治療として、抗ヘルペス剤(バルトレックス1日1錠)の長期服用も検討します。

尚、性器ヘルペスも新生児に産道感染を起こすため、分娩時に性器ヘルペスの病変があれば全例帝王切開、発症より一ヶ月以内の初感染または発症より1週間以内の再発でも帝王切開になります。

 

バルトリン嚢胞・膿瘍

膣内を潤すバルトリン腺が、炎症など何らかの原因により分泌液が排泄できずに溜まった状態をバルトリン嚢胞といい、感染による膿瘍を形成した状態をバルトリン膿瘍といいます。外来で内用液を吸引し、抗生剤(メイアクトなど)、鎮痛剤(ロキソンインなど)を投与することがほとんどですが、大きさや症状によっては、手術目的で他施設へ紹介いたします。