婦人科疾患

月経トラブル・不正出血について

月経困難症

月経困難症には、子宮内膜症・子宮筋腫などの疾患が原因の器質的月経困難症と器質的な疾患を認めない機能性月経困難症があります。内診や超音波検査で、卵巣嚢腫や子宮筋腫などの器質的疾患を確認し、軽度な器質的疾患や機能性月経困難症の場合は、鎮痛剤(ロキソニン、ボルタレンなど)、漢方薬(当帰芍薬散、芍薬甘草湯など)、低用量ピル(ルナベルULD、ヤーズなど)を用いることが多く、診察所見や自覚症状によっては人工的に月経を一時的に抑える、偽閉経療法(リュープリン1.88皮下注、スプレキュアMP皮下注、スプレキュア点鼻薬など)を4~6ヵ月間行うこともあります。

 

過多月経・過長月経

子宮筋腫、特に粘膜下筋腫ポリープが過多月経の原因になることがあります。筋腫や内膜ポリープが認められなくても、女性ホルモンの子宮内膜への影響により月経量が増加することもあります。子宮内膜細胞診で悪性所見がないことを確認した上で、筋腫を小さくするために偽閉経療法を行ったり、子宮内膜を薄くさせるために低用量ピルを用いることがあります。また、40~45歳の方には、過多月経に保険適応のあるミレーナ(IUS)を挿入することもあります。

 

月経不順・無月経

月に2回以上月経がきたり、2か月以上月経がこない場合は、毎朝基礎体温を測定・記録してもらい、排卵の有無を確認します。年齢、各種ホルモン値、卵巣の状態、妊娠の希望の有無などにより治療法は異なりますが、ホルモン剤(プレマリン、ソフィアAなど)、漢方薬(当帰芍薬散、温経湯など)を主とした薬物療法を行います。また、著名で急激な体重減少が無月経の原因となることも少なくないので、必要があれば栄養士による栄養指導(1回1,000円)を受けて頂きます。ただし、すぐに妊娠をご希望している無排卵の方の場合は、排卵誘発剤(クロミッド)の使用や不妊症専門医へご紹介する場合があります。

 

月経前症候群(PMS)

PMSとは、月経以前にみられる頭痛、むくみ、乳房緊満感などの身体症状やうつ症状、興奮等の精神症状のことであり、原因は未だはっきりしませんが、排卵後の黄体ホルモンの影響が言われています。その治療として、低用量ピル(月経困難症もあればヤーズ)、漢方薬(加味逍遥散など)、向精神薬(レクサプロなど)を組み合わせながら治療にあたります。

 

不正出血

月経以外に出血を来たすことを不正出血といい、良性・生理的な出血と悪性の出血を鑑別する必要がありますので、できるだけ出血を認めたときに受診して下さい。出血部位が子宮膣部からであれば、まず至急頸部細胞診を行います、子宮頚管ポリープが認められれば、外来診療中にほとんどは切除可能です。

子宮体部からの出血の場合、子宮内膜細胞診・組織診を行います。少し痛みがありますが、大切な検査ですのでご了解ください。超音波検査で、子宮筋腫や子宮内膜症ポリープの有無を確認します。以上のような器質的な疾患がなければ、ホルモンの影響による機能性出血が考えられるため、経過観察またはホルモン剤にて治療致します。