院長コラム

50歳前後の子宮内膜症の管理について

子宮内膜症は女性ホルモンであるエストロゲンによって増悪する疾患です。そのため、卵巣チョコレート嚢胞や腹腔内癒着に対する手術をされた方でも、閉経までは残存した病変が再燃する可能性があり、薬物療法を追加することも少なくありません。
また、手術を要さない子宮内膜症であっても、それ以上進行させないためには薬物療法が必要です。一般的に閉経後は子宮内膜症が軽快するため、そこまでいかに逃げ込めるかがポイントになります。
今回は、50歳前後の子宮内膜症の管理について、主に当院で行っている方法をご案内します。

 

すでに低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP)または黄体ホルモン製剤の服用にてコントロールされている方

月経困難症がLEPや黄体ホルモン製剤でコントロールされている方は、50歳まで継続して服用して頂きます。
ただし、LEPの場合、血栓症などの副作用の観点から50歳を超えて服用することはできません。
一方、黄体ホルモン製剤は50歳以上も服用することが可能です。
そのため、50歳の時点でホルモン検査を行い、閉経状態となっていない場合は、LEP服用者は黄体ホルモン製剤(ディナゲスト錠1.0㎎など)に切り替えます。
尚、50歳以降の黄体ホルモン製剤服用は、原則としてホルモン検査で閉経と判断するまで継続して頂いています。

 

LEPや黄体ホルモン製剤の効果が不十分になってしまった場合

LEPや黄体ホルモン製剤の服用にも関わらず、月経痛・骨盤痛・性交痛の増強や卵巣チョコレート嚢胞の増大などがみられた場合には、人工的に閉経させる「偽閉経療法」に切り替えることがあります。
月に一回の皮下注射(リュープロレリン1.88注など)と1日1回連日服用の内服薬(レルミナ錠)があり、どちらも治療効果は非常に高いのですが、骨量低下などの副作用のため、6か月間しか施行することができません。
尚、40代で偽閉経療法を行った場合、治療の終了後に月経が再開することが多いのですが、50歳前後で偽閉経療法を行った場合は、そのまま自然閉経に逃げ込むことも期待できます。

 

子宮内膜症の治療を40代から始める場合

月経痛・骨盤痛が強い方、小さいながらもチョコレート嚢胞がみられる方には、偽閉経療法を6か月行い、その後ディナゲスト錠1.0㎎などに移行することがあります。
閉経までディナゲスト錠1.0㎎を続けること事が多いですが、更年期障害などの副作用がみられた場合はディナゲスト錠0.5㎎に変更する場合があります。
反対に、ディナゲスト錠1.0㎎継続中、症状が再燃した場合には、骨量低下がないことを確認の上、再び偽閉経療法を行うことも少なくありません。

 

経過観察中、卵巣チョコレート嚢胞の増大傾向がみられた場合は、手術療法の可能性を考えて高次施設へ紹介します。
また、子宮内膜症の既往の方は、心血管障害のリスクが高いことが知られています。
したがって、閉経後であっても婦人科診察はもちろん、内科的な健康診断を定期的に受けるようにしましょう。