院長コラム

2000年以降に生まれた女性は子宮頚がんによる死亡リスクが増加します

1990年代一世を風靡した音楽ユニット「ZARD」。今年デビュー30周年を迎えて、全曲サブスク解禁とのニュースが発表されました。
ZARDのボーカル坂井泉水さんが、子宮頚がん闘病中に不慮の事故でご逝去されたのが2007年。
今回は、子宮頸がんとその予防ワクチンについて説明します。

 

子宮頚がんにより毎年約3,000名が死亡

発がん性の高いヒトパピローマウイルス(ハイリスク型HPV)が子宮頚部に持続感染すると、異常細胞が発生します。
まず軽度異形成となり、その一部は中等度異形成に進行し、さらにその一部は高度異形成に移行します。この状態で放置していると、上皮内癌(0期のがん)、そして浸潤がんへと進展する可能性があります。
全国のデータでは、子宮頸がんと診断された方は約11,000名(2018年)、亡くなられた方は約3,000名(2019年)で、2,000年ごろより増加しています。
また、5年相対生存率は約75%(2009~2011年)であり、治療したとしても、4人に1人は5年生存することができないと言われています。

 

性成熟期女性と子宮頚がん

子宮頚がん罹患率は、25歳ごろから増え始め、30歳代で急増し、45~50歳ごろピークを迎え、以降ゆっくり減少します。
また、死亡率は30代から50代にかけて、直線的に増加しています。
子宮頚がんは“マザーキラー”とも呼ばれ、小さなお子さんがいらっしゃるお母さん世代の命を奪う、とても残酷な病気です。
もし、手術により命が助かったとしても、子宮摘出した場合は、その後妊娠することができなくなります。

 

HPVワクチン接種停止後、子宮頚がんによる死亡リスク増加

ハイリスク型HPVのうち、特に悪性度の高い16型、18型に対するHPVワクチンは、世界的に幅広く接種されており、その有効性と安全性は証明されています。
我が国でも2010年からワクチン接種の公費助成が開始となり、1994年から1999年生まれの女性に対してHPVワクチンの接種が推奨され、8割近くの方が実際に接種されました(接種世代)。
しかし、2013年6月以降、厚生労働省が積極的勧奨を差し控えたため、2000年生まれ以降の接種率はほぼ0%となりました。その結果、2000年~2004年生まれのワクチン接種停止世代は、接種世代と比べて、子宮頸がん罹患(死亡)相対リスクが増加しています。
このままワクチン接種率が低いままであれば、それ以降に生まれた世代も子宮頸がんリスクが高まると思われます。

 

小学校6年生から高校1年生相当(令和3年度はコロナウイルス感染拡大のため自治体によって高校2年生相当)の女子は、無料でHPVワクチンを接種できます(6か月で合計3回)。
HPVワクチン接種ご希望の高校1年生(または高校2年生)相当の方は、できるだけ9月中に1回目の接種を受けましょう(助成の対象が3月までのため)。
ZARDで青春時代を過ごされたお母様におかれましては、是非お嬢様にHPVワクチン接種をお勧め下さい。
もし、坂井泉水さんが生きていらっしゃったら、思春期の女性に対してHPVワクチンの重要性を訴えていたかも知れない、と思う今日この頃です。