院長コラム

尖圭コンジローマの予防と治療

尖圭コンジローマとは、外陰部・肛門周囲・腟内・子宮頚部などに“良性のイボ”を形成する性感染症です。
ローリスク型のヒトパピローマウイルス(HPV)である6型・11型が原因であり、がんに変化することはありませんが、再発を繰り返す可能性や、経腟分娩にて赤ちゃんに感染する可能性がある、とても厄介な感染症です。
今回は、尖圭コンジローマの予防と治療を中心に説明します。

 

尖圭コンジローマの予防には“HPVワクチン”接種

コンドームでは完全に予防することができず、HPV6型・11型に対応できるHPVワクチン接種が唯一の予防になります。現在日本には、尖圭コンジローマ予防効果のあるワクチンが2種類あります。
一つは4価ワクチン「ガーダシル」です。このワクチンは、HPV6型・11型、子宮頚がんの原因ウイルスであるハイリスク型HPV16・18型、合計4つのHPVタイプに対応できます。また、小学校6年生相当から高校1年生相当の女子に対して、定期接種として自治体の助成を利用することができます。
もう一つのHPVワクチンは、9価ワクチン「シルガード9」です。先の4つのHPVタイプに、HPV31・33・45・52・58の5つを加え、合計9つのHPVタイプに対応可能です。
HPVワクチン接種の目的として子宮頸がん予防が最も重要ですが、尖圭コンジローマの予防も兼ねていることをご承知おき下さい。性交経験がない方はもちろん、性交経験がある方にも「ガーダシル」または「シルガード9」の接種をお勧めします(自費)。

 

治療は「クリーム」と「切除・蒸散」の二本柱

外陰部の尖圭コンジローマ治療の第一選択は、「イミキモド5%クリーム(ベセルナクリーム)」です。イボの部分に適量を1日1回、週3回(月・水・金など)、就寝前に塗布し、そのまま朝まで保つようにします。翌日の起床後に石鹸を用いて、塗布した薬剤を水や温水で洗い流すようにします。ベセルナクリームは16週間連続で使用することが可能で、病変消失までの期間の中央値は約8週間といわれています。時間はかかりますが、治療後の再発率は10%と少ないのが特徴です。
一方、子宮頚部や腟内、肛門内の病変に対しては、ベセルナクリームは禁忌であり、使用することができません。そのため、切除・レーザー蒸散・焼灼・凍結凝固などの外科的治療を行います。ただし、外科的治療では術後3か月以内に約30%が再発するといわれています。

 

当院では、外陰部の病変に対して、まずベセルナクリームを約8週間使用し、残存する病変が広範囲であれば16週間まで継続します。
もし、8週間での残像病変が少ない場合や、16週間の使用にも関わらず病変が残存している場合は、炭酸ガスレーザーを用いた切除・蒸散を行っています。
尚、腟内、子宮頚部に尖圭コンジローマが発生している場合は、高次施設へ紹介させて頂く旨、ご了承下さい。