院長コラム

10代の月経痛が50年後のがん・心筋梗塞・脳梗塞に繋がっているかも

昨日、東京都の産婦人科医学会に参加し、京都府立医大の先生から子宮内膜症についてのご講演を伺いました。
今回は、その講演での学びを中心に、子宮内膜症の早期発見の重要性についてお伝えします。

 

 

子宮内膜症とは

本来であれば子宮の内側にある子宮内膜組織が、何らかの原因で卵巣、腹膜、子宮を支える靱帯など、子宮内側以外の場所に発生し、増殖することがあります。
これを子宮内膜症といい、患者さんの9割に月経痛が認められ、7割の方に月経時以外の下腹部痛がみられます。

 

 

子宮内膜症が招くトラブル

(1)不妊症

不妊女性の2人に1人は子宮内膜症ともいわれています。子宮内膜症に伴う卵管周囲の癒着などにより、精子・卵子・受精卵の通り道である卵管の通過性が落ちるため、妊娠しづらくなります。
不妊症の原因は様々ですが、早期に子宮内膜症を発見し、治療することは、ある種の不妊症の予防に繋がります。

(2)合併症妊娠

子宮内膜症の方が妊娠すると、早産・子宮内胎児発育遅延・前置胎盤・前期破水・産後出血の増量など、母体のみならず胎児へも影響する重篤なトラブルをきたす可能性が高くなります。
妊娠する前に子宮内膜症の治療し、少しでも産科合併症のリスクを減らすことが大切です。

(3)卵巣がん

子宮内膜症に伴う卵巣のう腫(チョコレートのう腫)は、40歳以上、大きさは10cm以上でがん化する可能性が高くなります。
ただし、小さくてもがん化する可能性がないわけではありませんので、定期的な画像検査は必要です。

(3)心筋梗塞・脳梗塞

子宮内膜症は全身の慢性的な炎症疾患とも言われます。炎症とは細菌や様々な刺激から自分の身を守るための免疫反応ですが、その反応が過剰になると血管内皮にもダメージが加わり、動脈硬化を引き起こすことがあります。
その結果、血管が狭くなり、更に進行すると心筋梗塞・脳梗塞などの重篤な病気に繋がる可能性もあります。
つまり、子宮内膜症の方は将来的に心筋梗塞・脳梗塞になる可能性が高いといえます。

 

 

お母さんが子宮内膜症であればお嬢さんもご用心

子宮内膜症は遺伝的な要因のあるといわれており、お母さんが子宮内膜症と診断された場倍、お嬢さんも婦人科診察を受けた方がいいでしょう。
日頃から母と娘で、月経痛の有無や程度について話し合うことも、子宮内膜症の早期発見には大切かもしれません。

 

 

子宮内膜症はできるだけ早い段階で治療、できれば予防することがとても重要です。
中学生、高校生の皆さん、月経痛がつらい方は一人で我慢せず、是非婦人科を受診して下さい。
思春期の女子の診察は、問診とお腹からの超音波検査(痛くありません)が中心であり、内診といった婦人科特有の診察は致しませんので、お気軽にいらして下さい。