院長コラム

高血圧症の方のOC・LEP服用について

「低用量経口避妊薬、低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(OC・LEP)」は、避妊目的(自費)あるいは月経困難症治療目的(保険)として、幅広く用いられています。
ただし、OC・LEPが禁忌である疾患や慎重投与が求められる疾患があり、高血圧症もその一つです。
今回は、「低用量経口避妊薬、低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬ガイドライン(OC・LEPガイドライン)2020年度版」を参考に、高血圧症の方のOC・LEP服用について説明します。

 

収縮期血圧160mmHg以上、拡張期100mmHg以上の方は禁忌

高血圧症の方がOC・LEPを服用すると、服用していない方と比べて、心筋梗塞や脳梗塞のリスクが約2.5倍も高まるとの報告があります。
また、脳出血に関しても、35歳以上の高血圧の方の場合、OC・LEPによりリスクが約2倍になるとのことです。
そこで、ガイドラインでは、診察室での血圧測定で収縮期血圧160mmHg以上や拡張期100mmHg以上の値が持続する方は、OC・LEPは禁忌となっています。
また、そこまで血圧は高くなくても、狭心症、高血圧性網膜症、一過性脳虚血性発作など血管病変が明らかな場合は、OC・LEPにより血管病変の進行を促進する可能性があるため、服用できません。

 

収縮期血圧140~159mmHg、拡張期90~99mmHgの方、降圧剤などで血圧がコントロールされている方は慎重投与

軽度高血圧症の方の場合、OC・LEPの服用で血圧が上昇するといわれています。また、OC・LEPを服用中の方は血圧のコントロールが不良な方も多いようです。
ある研究報告によると、OC・LEP服用中に高血圧となった場合、服用を中止することが降圧効果になる、とのことです。
これらのことから、軽度の高血圧、収縮期血圧140~159mmHgまたは拡張期90~99mmHgの方は、禁忌ではありませんが、慎重に使用する必要があるとされています。
一方、もともと高血圧の方で、降圧剤にて良好に血圧がコントロールされている方の場合、OC・LEPの服用で心血管系疾患リスクが高くなることはないようですが、ガイドライン上は慎重投与となっています。
ちなみに、現在血圧が正常でも、妊娠中を含め過去に高血圧の既往がある方は、やはり慎重にOC・LEPを服用する必要があります。

 

当院では、OC・LEP服用前および服用中の血圧測定で軽度高血圧がみられた場合は、ご自身で血圧計をご購入頂き、ご自宅で連日血圧を測定して頂きます。
もし、ご自宅での血圧が収縮期135mmHg以上、拡張期85mmHg以上が続くのであれば、高血圧症として内科を受診して頂きます。
降圧剤服用にもかかわらず血圧の上昇がみられる場合は、OC・LEPを中止し、黄体ホルモン製剤などへの切り替えを検討します。