院長コラム

過活動膀胱に対する薬物療法

急に尿がしたくなり、我慢が難しくなる(尿意切迫感)、日中8回以上排尿する(頻尿)、夜中に排尿のため1回以上トイレに起きる(夜間頻尿)、トイレまで間に合わず尿漏れしてしまう(切迫性尿失禁)。
もし、このような症状がみられたら、過活動膀胱になってしまった可能性があります。
過活動膀胱は40歳以上の約10%の女性にみられると言われており、日常生活に支障をきたすこともある、とても厄介な病気です。
今回は、過活動膀胱に対する治療薬について説明します。

 

 

過活動膀胱の原因

尿が膀胱内に十分に溜まっていないのにも関わらず、膀胱の筋肉が異常に収縮すると、急に尿意切迫感をきたし、頻尿や尿失禁を認めるようになります。

膀胱の異常な動きの原因として、脳卒中などの後遺症である神経系のトラブルや加齢にともなう変化などが考えられていますが、多くの過活動膀胱では原因が特定できません。

過活動膀胱の薬物治療の目的は、膀胱の異常収縮を抑制することと、膀胱の尿を溜める機能を高めることの、二つが中心になります。

 

 

治療薬(1)抗コリン剤

膀胱が勝手に収縮するのを抑制する薬剤を「抗コリン剤」といいます。アセチルコリンというホルモンはアセチルコリン受容体と結合することで作用しますが、膀胱の筋肉の異常収縮にも関与しています。そこで、抗コリン剤を投与し、アセチルコリンが受容体と結合することを防げば、膀胱の異常収縮を抑えることができます。

この薬剤は、従来から広く使用されていますが、口渇、便秘などの副作用を認めることがあるため、その長期使用には注意が必要です。

当院では主に、「ステーブラ錠(0.1mg)」2錠/日分2を処方しています。

 

 

治療薬(2)β3作動薬

膀胱の筋肉に存在するアドレナリンβ3受容体を刺激すると、膀胱は弛緩し伸びやすくなるため、蓄尿機能は向上し、尿意切迫感や頻尿が改善します。つまり、β3作動薬はβ3受容体と結合することにより、膀胱の蓄尿機能を改善させます。

β3作動薬は心拍数増加や不整脈などの副作用が見られることもありますが、比較的効果がマイルドなので、使用しやすい薬剤です。

当院では従来から「ベタニス錠(50mg)」1錠/日を処方していましたが、2018年秋に「ベオーバ(50mg)」が発売されました。「ベオーバ」は半減期も長く、効果発現が早いといわれています。また、循環器系の副作用が減少したことで、更に使用しやすくなっているようです。

 

 

服用方法

通常、抗コリン剤またはβ3作動薬のどちらか一方を持続的に服用します。ただし、効果が不十分な場合には、二種類の薬剤を併用することも可能です。また、どちらかを連続服用、もう一方を屯服にする方法もあります。もしベタニスを持続にした時にはステーブラを屯服とし、ステーブラを持続にした時にはベオーバを屯服として使用します。

また、日頃は生活に支障きたさないため習慣的に服薬していない方でも、旅行や観劇などで過活動膀胱の症状が気になる方は、ベオーバを一時的に服用することもできるそうです。

 

 

過活動膀胱治療薬は近年種類が増えてきました。当院では、お一人おひとりの症状や体質、生活のリズムやスケジュールに合わせて、薬剤の種類や服薬方法を考えて参ります。お気軽にご相談下さい。