院長コラム

過多月経の原因と薬物治療

過多月経とは経血量が140ml以上のものを言いますが、80mlを超えると60%以上の女性は貧血を呈するといわれています。
今回は、過多月経の原因と薬物治療について説明します。

 

 

過多月経の原因

月経とは子宮内膜が剥がれて、流れ落ちる現象ですので、子宮内膜面積の増加が過多月経の原因となります。子宮内膜を圧迫するような子宮筋腫や子宮内腔が拡張する子宮腺筋症は、代表的な過多月経の原因となる婦人科疾患です。

また、止血するために必要な凝固因子に異常をきたす内科疾患や抗凝固剤の服用も、過多月経の原因になることがあります。

その他、無排卵周期症、黄体機能不全、甲状腺機能低下症などホルモン環境の異常がみられた場合も、経血が増える傾向にあります。これらの疾患では、卵胞ホルモン(エストロゲン)の分泌が持続することにより内膜が肥厚しますが、排卵しなければ子宮内膜を安定化させる黄体ホルモンの分泌がなく、また排卵したとしても黄体ホルモンの分泌量が少なければ、子宮内膜が不安定な状態になります。その結果、子宮内膜が土砂崩れを起こして出血が増えると考えられています。

 

 

過多月経・貧血の診断

実際に経血量を計測することはほとんどありませんが、約3cm以上の凝血塊、生理用品の交換頻度が1時間以内などは、経血量80ml以上の指標になるといわれています。

過多月経による貧血を調べる血液検査で、ヘモグロビンが12g/dl未満、フェリチン(貯蔵鉄)が12ng/mlの場合は、鉄欠乏性貧血あるいは鉄欠乏状態の可能性があるため、鉄剤による治療が必要になります。

 

 

過多月経に対する薬物治療

日常生活に支障をきたす程の過多月経である場合や、鉄欠乏性貧血の治療が必要であると判断された場合は、過多月経に対して薬物治療を行います。

○ トラネキサム酸(トランサミン錠)
トランサミン錠には止血効果がありますが、過多月経の場合、通常量(1.5g/日)では効果が不良であるため、多量(3.0~4.0g/日)を短期間使用することがあります。

○ 非ステロイド性抗炎症薬(ロキソニン錠・ボルタレン錠など)
非ステロイド性抗炎症薬は月経痛に用いることも多い消炎鎮痛剤ですが、子宮の循環血流を低下させる作用があるため、経血量の減少も期待できます。ただし、その効果はあまり強くないため、あくまでも鎮痛目的で使用します。

○ 経口避妊薬(OC)または低用量エストロゲン・プロゲスティン配合薬(LEP)
OC(避妊目的:自由診療)とLEP(月経困難症治療目的:保険診療)はともに子宮内膜を菲薄することで、経血量を減少させます。10~30代女性の過多月経には第一選択薬と考えています。

○ 黄体ホルモン放出子宮内システム(LNG-IUS:ミレーナ)
ミレーナは子宮内膜組織に対して高濃度の黄体ホルモンを持続的に放出することで、子宮内膜を菲薄化します。過多月経に保険適応があり、5年に一回入れ替えします。特に経腟分娩の経験がある方や、OC・LEPが禁忌の方に使用するこが多いです。

○ キュウ帰膠艾湯
痔出血に対して保険適応のある漢方薬です。子宮出血に対しては継続して服薬して頂きますが、人によってはとても効果的です。

 

 

薬物治療の効果が悪ければ、外科的な治療が必要です。その場合には、高次施設へ紹介致します。
経血が多くなったと感じた方、特に健康診断で貧血を指摘された方は、一度婦人科を受診され、精査して頂くことをお勧めします。