院長コラム

腟炎の治療法 ~ 細菌性腟症・カンジダ腟炎・トリコモナス腟炎 ~

婦人科外来を受診される方の中で、帯下増量や異臭、外陰部そう痒感を認める方は少なくありません。
今回は、「産婦人科処方のすべて2020」(医学書院)を参考に、代表的な腟炎である、細菌性腟症・カンジダ腟炎・トリコモナス腟炎について、その治療法をお伝えします。

 

細菌性腟症

細菌性腟症は、3つの中で最も頻度が高い疾患です。何らかの原因で腟内の善玉菌(乳酸桿菌)が減少すると、悪玉菌(ガードネレラ菌・嫌気性菌など)がはびこってしまいます。その結果、黄色の帯下が増え、魚が腐ったような匂いを認めることがあります。
細菌性腟症の場合、腟内を浄化する善玉菌が増えれば、治療しなくても自然に軽快することもありますが、症状が長引く場合や生活に支障をきたす場合には薬物療法を行います。
特に、妊婦さんの細菌性腟症は破水や流早産の原因になるため、抗生剤を用いた治療が必要です。
細菌性腟症の薬物療法として、
○フラジール腟錠250mgを1日1回1錠膣内挿入を7日間
あるいは
○フラジール内服錠250mg1回1錠1日3回内服を7日間
が標準的です。
フラジール(腟錠・内服錠)は、善玉菌を減らさず悪玉菌のみを死滅させるので、とても使用しやすい薬剤です。
ただし、内服薬の場合、アルコールを摂取すると腹痛や嘔気などの症状が見られることがあるため、フラジール内服錠服薬中および服薬終了後3日間は、飲酒を避けるようにしましょう。
尚、妊婦さんに対しては腟錠を優先していますが、内服錠を用いる場合は原則として妊娠12週以降が勧められています。

 

カンジダ腟炎

真菌であるカンジダは腟内に存在する半常在菌であるため、かゆみや帯下の増量といった症状が認められた場合に限り治療対象となります。
カンジダ腟炎の帯下は粥状、酒粕状となることが多く、腟洗浄によりこれらの帯下を洗い流すことが大切です。その上で抗真菌薬の腟錠を挿入します。
当院では、
○イソコナゾール硝酸塩300mg1日1回2錠挿入を単回
あるいは
○フロリード腟坐薬100mg1日1回1錠挿入を6日間
の治療を行っています。
また、外陰部掻痒も認める場合には、フロリードクリームなどの抗真菌外用剤を処方しています。

 

トリコモナス腟炎

トリコモナス膣炎は、腟トリコモナス原虫が性行為や接触よって腟・子宮頚管・尿道に感染する疾患です。
他の腟炎と異なり、腟内だけでなく尿路に原虫が生息している可能性があるため、内服薬が薬物治療の基本になります。
当院では
○フラジール内服錠250mg1回1錠1日2回内服を10日間
服薬して頂いています。
また、性行為にて感染している可能性が否定できない場合には、パートナーも一緒に内服薬で治療する必要があります。
お互い治癒したことが確認できるまでは、性行為は控えましょう。

 

腟炎を防ぐためには、体調を整え、外陰部を清潔に保つことが大切です。
また、妊娠を希望しない性行為の際には、パートナーにコンドームを装着して頂くことも必要です。
その上で、帯下の異常を認めた場合は、早めに婦人科を受診しましょう。