院長コラム

腸内細菌叢と環境要因について

腸内の健全な細菌叢は、全身の健康に繋がります。
今回は「日本医師会雑誌2020年12月号」を参考に、腸内細菌叢と環境要因について情報を共有したいと思います。

 

プロバイオティクスとは

最近、「プロバイオティクス」という言葉を聞く機会が増えてきました。
プロバイオティクスとは「人体に有用な生きた微生物」、つまり善玉菌であり、主に乳酸を産生する「乳酸菌」、乳酸と酢酸を産生する「ビフィズス菌」、乳酸と酪酸を産生する「酢酸菌」などがあります。
これら善玉菌は、ヨーグルトやフェルミン、ラックビー、ビオスリーなどの医薬品から摂取する事ができます。
プロバイオティクスには様々な有益な作用があります。主な作用として
①悪玉菌である病原性微生物の侵入を防ぎ、増殖を抑制・阻止する
②腸内環境を整え、免疫能を向上させる
③腸内の炎症を抑え、下痢を改善させる
④消化管の運動を促進させ、便秘を改善させる
などがあります。

 

腸内細菌叢と環境

腸内には多種多様な細菌が存在しており、あたかもお花畑に似ていることから「細菌フローラ(腸内細菌叢)」と呼ばれています。その腸内細菌叢には善玉菌と悪玉菌があり、そのバランスは様々な環境に影響されます。

<善玉菌を増やす環境要因>

  • 食物線維:1日あたりの食物線維の推奨摂取量は25~30gですが、日本人の平均摂取量は15g程度で大幅に不足しているため、積極的に摂取することが勧められています。
  • 植物性タンパク質:植物性タンパク質を多く含む食事は善玉菌を増やし、悪玉菌を減らします。タンパク質は主に植物性のものを摂取しましょう。
  • 地中海食、日本食、野菜、果物
  • 運動

 

<悪玉菌を増やす環境要因>

  • 高脂肪食:高脂肪食は悪玉菌を増やすことが知られていますが、妊娠期に高脂肪食を摂取する習慣があった母親から生まれた子供の腸内細菌叢では、善玉菌が減少していたとの報告があるそうです。
  • 動物性たんぱく質:植物性タンパク質とは逆に、動物性タンパク質を多く含む食事は悪玉菌の増加、腸の炎症の増加、有害な代謝産物の増加をきたすといわれています。
  • 西洋食、糖分、塩分、
  • ストレス

 

母子環境と出生児の腸内細菌叢

個人の腸内細菌叢は3歳ぐらいででき上がりますが、それには母子環境が大きく影響しています。
妊娠期の母体ストレス、母親の肥満や飢餓、妊娠期感染症、出生直後の衛生環境など、多くの因子が絡み合って子供の腸内細菌叢が形成されます。
中でも、善玉菌のビフィズス菌を増やす因子が含まれている母乳は、赤ちゃんの健全な腸内細菌叢形成に大変有用であるといわれています。

 

日頃の健康的な食生活や適度な運動、ストレス解消などにより、善玉菌を増やすことは可能です。
特に妊婦さんの生活環境は、ご本人だけでなく、お腹の赤ちゃんの将来にとっても非常に大切です。
是非、腸内細菌叢を健全な状態にするため、定期的に生活習慣を見直すようにしましょう。