院長コラム

元アイドルがかかってしまった「子宮頚部腺がん」

先日、元アイドルグループのメンバーであった35歳の女性が「子宮頚部腺がん」にかかっていることを自身のブログで公表しました。
ステージは極めてⅡ期に近いⅠ期で、近く広汎子宮全摘術を行う予定とのことです。
今回は、子宮頚部腺がんについて説明します。

 

 

子宮頚がんの二つのタイプ

子宮頚がんは子宮頚部(子宮の入り口)に発生するがんで、大きく「扁平上皮がん」と「腺がん」の2つのタイプがあります。

子宮頚癌の約75%は扁平上皮がん、約25%は腺がんですが、近年腺がんの患者数が増加しています。

 

 

子宮腺がんの原因

扁平上皮がん、腺がんともに、発がん性の強いハイリスクタイプ(約15種類)のヒトパピローマウイルス(HPV)による感染が主な原因です。中でも16型と18型のHPVが原因となるケースが多くを占めています。

特に腺がんでは、18型が原因となることが多いと言われています。
実は、頚部腺がんの原因としてはHPV感染以外も考えられていますが、詳細はまだわかっていません。

 

 

子宮頚部腺がんの特徴

子宮頚部腺がんは、扁平上皮がんに比べて
細胞診で判定することが難しいため、早期発見が難しいと言われています。

また、早期から転移しやすいため、扁平上皮がんに比べて予後は良くありません。

 

 

頚部腺がんの治療

扁平上皮の上皮内がん(0期)の治療は円錐切除が基本ですが、上皮内腺がん(0期)の場合、円錐切除を施行しても約20%にがんが残存する、との報告があります。そのため、妊娠希望が無い方には子宮全摘術が推奨されています。

浸潤が微小なIA期の場合は、浸潤の深さなどにより、子宮全摘のみか、骨盤リンパ節郭清を追加する術式か、検討されます。
IB期の場合は広汎子宮全摘術が標準治療になります。

尚、腺がんは扁平上皮がんに比べて放射線療法、化学療法が効きにくいため、進行がんに対する治療は非常に困難になります。

 

 

予防法はあるのか?

(1) HPVワクチン

16型、18型HPV 感染を予防できるため、まずはHPVワクチンの接種が最も有効です。
性交経験を持つ前に接種するのが理想ですが、26歳までの女性にも強くお勧めします。
ご希望がありましたら、45歳までの女性も接種対象としております。

(2) 子宮頚がん検査(子宮頚部細胞診)

細胞診での早期発見が困難なケースがあるとはいえ、やはり子宮頚部細胞診は大切です。
当院では50歳までの方には、年に1回の検診をお勧めしています。

 

 

件の元アイドルの女性には、お子さんがお一人いらっしゃるようですが、もう一人産みたかった、と胸中を語っています。
子宮を摘出すれば、その後は子供を産むことはできません。
HPVワクチン接種と子宮がん検査。
皆さんの健康と未来を守るため、是非行動して下さい。