院長コラム

肥満タイプの方の不安症状に対する漢方療法

BMI(体重kg÷身長m÷身長m)が25以上の場合を肥満といい、日本女性の2割以上を占めるといわれています。
肥満は高血圧症、脂質異常症、2型糖尿病など多くの疾患の原因となるため、過食などの生活習慣を改善して減量することが大切です。
しかし、精神的な不安やストレスによって減量ができない方も少なくないようです。
今回、「phil漢方 No.89」(メディカルパブリッシャー)に、肥満タイプの方の不安症状に対する漢方薬の有用性についての記事がありましたので、情報共有したいと思います。

 

精神症状と肥満

過食の結果肥満になってしまった方の場合、その根底には精神的な不安やストレスが隠れていることがあるそうです。
更に、肥満になってしまったことで、精神症状が悪化するといった悪循環に陥ってしまうため、“負の連鎖”を断ち切る必要があります。
そのためには、生活習慣を改善して減量することが重要ですが、精神的要因のために生活習慣改善自体ができないケースもあるようです。
その場合、いかに不安症状やストレスなどの精神症状を軽減させるかがポイントになります。

 

柴胡加竜骨牡蠣湯(サイコカリュウコツボレイトウ)の有用性

今回の記事には、柴胡加竜骨牡蠣湯という漢方薬の有用性が紹介されていました。
柴胡加竜骨牡蠣湯は、比較的体力がある方の精神症状(不安、不眠、いらいら等)、高血圧症、動脈硬化症、慢性腎臓病などに用いられます。
まさに、肥満タイプの方の精神症状に適した漢方薬といえます。
記事には、数名の更年期女性の経過が報告されており、いずれも1か月の服薬で精神症状が軽快し、便通の改善がみられ、1年程で6~11㎏の減量に成功したとのことです。
また、この漢方薬に含まれている“柴胡”という生薬は自律神経の異常に効果があるため、更年期障害を認める方には特にお勧めのようです。

 

これまで当院でも、更年期女性の精神症状に対して柴胡加竜骨牡蠣湯を処方する場合があり、その効果は実感していました。
ただし、肥満の方の減量にも有用であることを今回初めて学びました。
今後、精神症状が強い更年期女性で、生活習慣の改善ができず悩まれている肥満タイプの方に対して、選択肢の一つとしてお勧めしたいと思います。