院長コラム

将来の妊娠を見据えた思春期女性の健康課題対策~喫煙と飲酒のリスク~

喫煙や過度の飲酒が身体に様々な悪影響を及ぼすことは知られています。
もちろん、妊娠・児の健康にとっても例外ではありません。
できるだけ早い時期、喫煙や飲酒を経験する前(であって欲しいですが…)の思春期女性に、タバコやアルコールの害について知って頂く事は大切です。
今回は、「将来の妊娠を見据えた思春期女性の健康課題対策」として、喫煙と飲酒のリスクについて、「婦人科産科 2021年12月号」の内容を参考に説明します。

 

喫煙の問題

そもそも喫煙は男女ともに不妊の原因となるため、将来妊娠を希望する場合は、男女ともに初めから吸わないようにしましょう。
そして、妊娠中の喫煙は、流早産、胎児発育遅延、前置胎盤、常位胎盤早期剥離といった様々な重篤な妊娠合併症を引き起こします。
しかも、直接(能動)喫煙だけでなく、受動喫煙でも影響が認められており、喫煙妊婦の流産率は非喫煙者の約2倍、受動喫煙者の場合でも流産率は約1.7倍と報告されています。
また、新生児への影響として、能動喫煙、受動喫煙問わず、口唇口蓋裂、先天性心疾患、手足の欠損、腹壁破裂、死産、乳児死亡率などが増加します。
さらに、生まれた子供の受動喫煙の影響として、乳児突然死症候群、発達障害、将来の肥満・高血圧・糖尿病などの増加も指摘されています。
ちなみに、紙たばこだけでなく、加熱式タバコにも様々な有害物質が含まれているため、「たばこ」と名の付くものすべて吸わない事が大切です。

 

飲酒の問題

妊娠中のお母さんが習慣的に飲酒することによって、胎児性アルコール症候群という様々な先天異常を引き起こすことが知られています。
妊娠初期の器官形成期での習慣的飲酒は、胎児の細胞増殖に影響を及ぼし、特異的な顔貌、小頭症など様々な奇形の原因となります。
妊娠中後期以降の習慣的飲酒では、精神遅滞や多動症などの中枢神経障害や子宮内胎児発育遅延・成長障害がみられます。
また、妊娠中の習慣的飲酒は、母児とって重大な妊娠合併症である常位胎盤早期剥離の最大のリスク因子とも言われています。
尚、妊娠中に安全とされるアルコール摂取量についてはわかっていないため、妊娠中は全期間通じて飲酒は避けましょう。

 

タバコもお酒も生活必需品ではありません。
一旦タバコを吸い、お酒を飲み、それが習慣化してしまうと、いざ止めようと思っていてもなかなか止められません。
できれば、20歳を過ぎてもタバコは吸わず、お酒もお付き合い程度にしておくことをお勧めします。