院長コラム

産後の抑うつ・不安感・イライラ感に用いる漢方薬

分娩後、急激な女性ホルモンの低下、育児のストレスなどで、抑うつ・不安感・イライラ感をきたす方は少なくありません。
当院では、「マタニティーブルーズ」と呼ばれる軽度な精神症状には、主に漢方薬を処方しています。
今回は、産後の抑うつ・不安感・イライラ感に用いる漢方薬について説明します。

 

キュウ帰調血飲(キュウキチョウケツイン)

「キュウ帰調血飲」はマタニティーブルーズをはじめ、産後の不調全般に使用される漢方薬です。
さらに、乳汁分泌を促進させる働きもあり、当院では乳汁分泌不全の授乳婦さんに処方することが多い漢方薬です。

 

女神散(ニョシンサン)

「女神散」は抗不安作用が強く、更年期障害などに用いられる“加味逍遙散の協力版”といわれています。
期待と不安など、気持ちの浮き沈みが激しい時に有効のようです。
当院では、育児がうまくいったり、うまくいかなかったり、気持ちが揺れ動く産後の方に処方することが多い漢方薬です。

 

加味帰脾湯(カミキヒトウ)

「加味帰脾湯」は虚弱体質で、貧血、不眠症、精神不安、神経症が認められる方に用いられます。
元気にする作用があるため、当院では特に気力が低下している方に処方しています。

 

抑肝散(ヨクカンサン)

「抑肝散」は、イライラ感を抑える代表的な漢方薬で、不眠にも有効です。
当院では、育児にイライラし、怒りっぽくなった時に服用してもらっています。
慢性的なイライラ感の場合は、比較的胃腸に優しい「抑肝散加陳皮半夏(ヨクカンサンカチンピハンゲ)」を継続して服用して頂いております。
尚、これらの漢方薬は、母乳を通じて赤ちゃんにも移行するため、“夜泣き”の治療など赤ちゃんの精神の安定化も期待できます。

 

抑うつ症状が強く、産後うつ病の可能性がある場合は、上記の漢方薬に加えて向精神薬を処方することがあります。
さらに、メンタルクリニックへ紹介させて頂くケーズもあります。
産後の精神症状に対して、当院ではスタッフ一同サポートして参りますので、お一人で我慢せずにご相談下さい。