院長コラム

母性健康管理指導事項連絡カードについて

お仕事をされている妊婦さんや産後1年以内の女性の中には、妊娠・出産に伴う様々なトラブルのため、自宅安静や入院、作業の制限などが必要になるケースがあります。
その際、主治医や助産師は、その方が働いていらっしゃる職場の事業主宛に、管理措置の指導内容について文書を作成します。
その文書を「母性健康管理指導事項連絡カード(母健連絡カード)」といい、診断書と同等の重みがあります。
今回、令和3年7月1日から運用が開始された新しい様式の母健連絡カードについて、代表的な症状名とその措置の例を中心に説明します。

 

  • つわり・妊娠悪阻

→休業(入院加療・自宅療養)、勤務時間の短縮、身体的負担の大きい作業の制限のほか、においがきつい・換気が悪い・高温多湿などのつわり症状を増悪させる環境における作業の制限などを指導します。期間は妊娠初期から妊娠16週までを目安に、ご本人と相談して判断します。

  • 貧血・めまい・立ちくらみ

→勤務時間の短縮、身体的負担の大きい作業(高所や不安定な足場での作業)の制限、ストレス・緊張を多く感じる作業の制限などを指導します。特に、血液検査で鉄欠乏性貧血を認め、鉄剤による治療を行っている方は、自覚症状がなくても措置の指導を行うことがあります。

  • 腹部膨満感・子宮収縮・性器出血

→妊娠22週未満の切迫流産、妊娠22週以上、妊娠37週未満の切迫早産に対しては、休業(入院加療・自宅療養)、勤務時間の短縮、身体的負担の大きい作業の制限などの措置が必要になります。

  • 腰痛・手や手首の痛み

→休業(自宅療法)、身体的負担の大きい作業(長時間の立ち仕事・同一姿勢を強制される作業・腰に負担のかかる作業など)の制限などの措置を指導します。特に腰痛の場合は、完全に消失することはほとんどないので、産休に入るまで措置が必要なことも少なくありません。

  • 血圧上昇・蛋白尿・浮腫

→血圧上昇のない蛋白尿や浮腫であれば、勤務時間の短縮、身体的負担の大きい作業の制限などの措置で大丈夫です。ただし、高血圧が認められた場合は妊娠高血圧症候群という重大な疾患となるため、少なくとも休業して自宅療養することが必要になります。

  • 妊娠中・産後の不安・不眠などの精神症状

→妊娠中はもちろん、産後1年以内の女性の不安・不眠などの精神症状に対しても、勤務時間の短縮、ストレス・緊張を多く感じる作業の制限など、措置を指導することができます。

  • 新型コロナウイルス感染症に関する措置

→ご希望の妊婦さんに対して「新型コロナウイルス感染症の感染の恐れが低い作業への転換または出勤の制限(在宅勤務・休業)の措置を講じること」(例)のように記載することができます。

 

以上の他にも、より具体的な症状や措置を記載することができます。
また、当院の場合、「妊娠中の通勤緩和の措置(在宅勤務を含む)」「妊娠中の休憩に関する措置」は、母健連絡カードが必要な妊婦さん全員に必要であると考えて記載しています。
もし、心身の体調で気になることがありましたら、お気軽にご相談下さい。
尚、当院では、「母健連絡カード」は「診断書」と同様、5,400円(税込)かかる旨、ご了承下さい。