院長コラム

更年期障害に対する加味逍遥散の効果

女性ホルモンのエストロゲンの低下が主因である更年期障害の治療として、エストロゲンを補うホルモン補充療法(HRT)が広く行われています。
ただし、HRTが禁忌である方、HRTの効果が不良である方に対しては、漢方療法が選択されることも少なくありません。特に、精神症状の訴えが多い方には「加味逍遥散(カミショウヨウサン)」という漢方薬がよく用いられます。
今回は、「株式会社ツムラ」のリーフレットを参考に、更年期障害に対する加味逍遥散の効果について説明します。

 

HRTは更年期障害に対して万能か?

更年期障害には様々な症状がありますが、ホットフラッシュ・発汗・冷えなどの「血管運動神経症状」と、いらいら・憂うつ・不眠などの「精神神経症状」に分けられます。
ある報告では、HRTは血管運動神経症状を有する75%以上の方に有効でしたが、精神神経症状を有する22%の方にしか効果が認められませんでした。
他の報告でも、HRTは精神神経症状よりも、血管運動神経症状の治療を得意としている、と言われています。

 

更年期障害に対する加味逍遥散の効果

HRTが効かない更年期障害に対しては、「当帰芍薬散」「桂枝茯苓丸」などの漢方薬を用いることが多いですが、比較的虚弱の方で精神神経症状が主体の場合は、「加味逍遥散」がいい適応になります。
ある報告によると、加味逍遥散を4週間服用すると、血管運動神経症状の重症度の低下
は約20ポイントでしたが、精神神経症状の重症度は約30ポイント以上も低下しました。
このことから、加味逍遥散は血管運動神経症に対しても効果が期待できますが、HRTとは反対に、精神神経症状の治療をより得意としている、といえそうです。

 

加味逍遥散が「有効な方」と「効果不十分の方」の違いは?

ただし、加味逍遥散が万人に有効という訳ではなく、「効果的な方」と「効果不十分の方」がいらっしゃいます。
ある報告によると、加味逍遥散が効果的であった方の投与前は、「不眠」「憂うつ」「めまい」の重症度が高く、効果不十分の方の投与前は、「動機」の重症度が高かったようです。
このことから、「不眠」「憂うつ」「めまい」といった精神神経症状が強い方ほど、加味逍遥散の効果が期待できるかもしれません。

 

更年期障害の治療はHRTが基本になりますが、改善しない症状に対しては、加味逍遥散をはじめ、様々な漢方薬を併用することが少なくありません。
実際に服薬して頂き、その有効性を確認しながら、個々にあった治療法をご一緒に探って参りましょう。