院長コラム
成長期女性アスリートの食事のポイント
女性アスリートといっても、トップレベルの方々の場合は専用の栄養士さんの指導の下、日々の食生活は管理されているかと思います。今回は、一般的な女性アスリートの方を対象に、「女性のための健康・栄養ガイドブック 成長期アスリート編」(大塚製薬発行 日本女性医学学会後援)の中から、食事に関するお役立ち情報を紹介したいと思います。
身体活動レベルとエネルギー必要量
アスリートの食事を考える上で、1日の身体活動レベルの程度を把握すえることは非常に大切です。一般的に、身体活動は、Ⅰ(低い)、Ⅱ(ふつう)、Ⅲ(高い)の3つに分かれており、Ⅰは「座位が多く、静的な活動が中心な場合」、Ⅱは「職場内での移動や立位での作業が多少あり、通勤・買い物・家事・軽いスポーツなどを含む場合」、Ⅲは「立位の多い仕事、スポーツや活発な運動習慣をもっている場合」を指します。
厚生労働省策定の「日本人の食事摂取基準2015年版」で示されている1日当たりの推定エネルギー必要量は、成長期では成長に必要なエネルギー量が加味されています。
身体活動レベル
年齢 Ⅰ Ⅱ Ⅲ
12~14 2,000 2,250 2,550
15~17 2,000 2,250 2,500
18~29 1,700 1,950 2,250
これらを参考に、練習がある日、練習のない日で摂取エネルギー量を調節することが大切です。
骨を強くする食事
女性の場合、思春期から20歳頃までにしか骨量は増えません。そのため、10代で骨を強くするための食事は、女性の一生を考えても非常に大切です。骨はタンパク質とカルシウムを材料につくられているため、まずこれらの栄養素の摂取が基本なります。また、カルシウムの吸収を促進するビタミンDや、カルシウムが骨に沈着するのを助けるビタミンKの摂取も重要です。
1日あたりのカルシウム摂取の推奨量は、10~11歳で750mg、12~14歳で800mg、15歳以上で650mgとなっています。牛乳(1杯:220mg)、ヨーグルト(1カップ:120mg)、いわし(1尾:290mg)、小松菜(100g:160mg)など、カルシウムを多く食品を積極的に摂取しましょう。ちなみに、魚類や干ししいたけなど、ビタミンDを多く含む食品をカルシウムと一緒に摂取すると効率的です。
貧血を防ぐ食事
若年女性の貧血の多くは鉄欠乏性貧血で、月経による鉄喪失が主因ではありますが、鉄とタンパク質の食事からの摂取不足も一因となります。従って、貧血を予防・改善するためには、鉄とタンパク質を適切量摂取する必要があります。
1日当たりの鉄の推奨摂取量は、10~14歳で14mg(上限:10~11歳35mg、12~14歳50mg)、15歳以降で10.5mg(上限40mg)となっています。豚レバー(60g:7.8mg)、ほうれん草(80g:1.6mg)、納豆(50g:1.7mg)、赤身の牛肉(80g:2.2mg)、小松菜(80g:2.2mg)、卵(1個:0.9mg)など、鉄を多く含む食品を適量摂取するようにしましょう。ちなみに、ニンジンやレモンなど、ビタミンCを多く含む食品を組み合わせると、鉄の吸収が高まるため効果的です。
食事には、①体を作る材料になる、②体を動かすためのエネルギー源になる、③体調を整える、という3つの大きな役割があります。
特に成長期アスリートの方は、より良いパフォーマンスのため、怪我や病気から身を守るため、そして将来の健康のためにも、日々の身体活動レベルに応じた、バランスのとれた食生活に心掛けましょう。