院長コラム

当院における緊急避妊法

緊急避妊法とは、避妊せずに性交した後、あるいは避妊に失敗した後、妊娠を回避するために緊急的に用いる避妊方法です。
今回は緊急避妊法の概略と当院での対応および消費税アップに伴う料金改定について、「女性医学ガイドブック 思春期・性成熟期編2016年度版」(金原出版)を基に説明します。

 

 

緊急避妊の方法と有効性

緊急避妊法では、性交後72時間以内に黄体ホルモン製剤「レボノルゲストレル錠1.5mg」1錠を服用して頂きます。この薬剤の主な避妊に対する作用は「排卵を抑制する、または遅延させる」ですが、「受精を障害する」、「受精卵の子宮内膜への着床を阻害する」といった作用もあるといわれています

レボノルゲストレル錠による緊急避妊法の失敗率(妊娠率)は全体で2%といわれています。ただし、緊急避妊法から次回予定月経まで性交しなければ妊娠率1.1%と低値ですが、性交してしまうと2.7%と上昇してしまいます。したがって、緊急避妊法のあとは性交しないか、あるいは低用量ピルを継続して服用することが大切です。

また、緊急避妊法は性交から早い時期に服用すればするほど避妊効果が高いといわれています。性交後24時間以内の服用で妊娠率は0.4%と低いですが、25~48時間の服用で1.2%、49~72時間で2.7%と上昇することが報告されています。可能な限り早めの受診をお勧めします(ただし、診療時間内でお願いします)。

 

 

レボノルゲストレル錠の副作用

この薬剤は副作用が少なく、ある報告では服用された方の93%以上に副作用はみられませんでした。3.6%に悪心、1.0%に下痢がみられましたが、服薬直後に嘔吐する方はいらっしゃらないようです。当院で処方した方にも明らかな副作用を認めた方はいらっしゃらず、比較的安心して使用できる薬剤です。

 

 

当院での診療の流れ

まず、問診票に最終月経、月経周期、性交時間などを記入して頂きます。妊娠の可能性がある時期の性交で、性交後72時間以内の方を緊急避妊法の対象としています。

問診では性交時の避妊の有無や避妊失敗の理由(コンドームの破損や腟内遺残など)を尋ね、低用量ピルに対して禁忌となる様な既往歴や合併症がないかどうかを確認します。

緊急避妊の適応であり、低用量ピルの服用が可能であれば、診察室で医師の目の前で「レボノルゲストレル錠1.5mg」1錠を服用して頂きます。更に、低用量ピル「ラベルフィーユ28錠」を院内で処方し、翌日から服用して頂きます。4週間後受診して頂き、副作用の有無、出血の有無を確認し、問題なければ「ラベルフィーユ28錠」の処方を継続します。

ちなみに、当院に初診でいらした方の場合、「レボノルゲストレル錠1.5mg」1錠の服用で12,200円、「ラベルフィーユ28錠」1か月分の処方でプラス2.200円となります。

 

 

緊急避妊法はあくまでも緊急避難的な処置であり、その後の低用量ピルによる避妊が非常に大切です。
妊娠を希望するまで低用量ピルの服用を継続するようにしましょう。
尚、月経困難症の治療で使用される低用量エストロゲン・プロゲスチン配合剤(LEP:ヤーズ配合錠、ヤーズフレックス配合錠、ジェミーナ配合錠など)も低用量ピルと同様にお考え下さい。