院長コラム

当院における月経前症候群の薬物療法

今回は、当院での月経前症候群(PMS)に対する薬物療法について、「女性医学ガイドブック思春期・性成熟期編2016年度版」(女性医学学会)、「研修ノートNo.94 婦人科外来での鑑別診断の手順と薬物療法」(日本産婦人科医会)を参考に説明します。

 

 

(1)漢方療法

当院ではPMSの精神症状に対する薬物療法として、漢方薬を第一選択としています。
抑うつ傾向が強い時は、加味逍遥散、加味帰脾湯、香蘇散など処方しています。
いらいらが強い方、怒りっぽい方には、抑肝散、抑肝散加陳皮半夏などが奏効することがあります。
むくみ、頭痛を認めるときには、五苓散、当帰芍薬散を処方することがあります。

これらの漢方薬は、症状が出現する排卵期から月経までの黄体期と呼ばれる時期に服用し、月経期から排卵までの時期は服用しない方法(間歇的服用)で始めることが一般的です。ただし、ご希望の方には黄体期以外の時期にも服用して頂く方法(持続的服用)に変更することも少なくありません。また、後述する抗うつ薬やホルモン剤と併用することも可能です。

 

 

(2)抗うつ薬:SSRI

抑うつ傾向が比較的強い方には、SSRIという抗うつ剤「レクサプロ」を用います。排卵後、症状が現れそうになりましたら10-14日間の間歇的服用をして頂きますが、月経が始まってからも持続的服用をご希望される方には、そのまま服薬を継続して頂いております。

ただし、うつ病の場合はSSRIの効果が現れるまで通常数週間かかるようですが、PMSの場合は速効性があるといわれています。そのため、間歇的服用で効果は現れない方は、漢方薬やホルモン剤への切り替えを検討します。

 

 

(3)低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP)

月経困難症の治療薬として用いるLEPは排卵を抑止するため、PMSにも効果があるといわれています。特に「ヤーズフレックス」による連続服用は大変有効であることが知られており、アメリカでは「ヤーズ配合錠」がPMDDの治療薬として認可されているようです。

ただし、日本ではPMS/PMDDの治療薬として認可されていないため、保険診療で用いる場合は月経困難症の方が対象になります。当院では、月経困難症とPNSのどちらもみられる方に対しては、禁忌でない限り「ヤーズフレックス」を第一選択としています。

 

 

当院では漢方薬、SSRI、LEPを中心にPMSの治療をしていますが、精神症状の改善がみられない時には、近隣の精神科クリニックへ紹介致します。
ただし、PMS/PMDDは精神科領域でも特殊性が高いようですので、多少遠方でも専門外来をご案内することもあります旨、ご了承下さい。