院長コラム

当院における妊娠初期(妊娠12週未満)の流産手術について

当院では妊娠12週未満の流産に対して、原則として日帰り手術を行っております。
最近、新型コロナウイルス感染拡大の影響で、入手困難な薬剤などもあり、麻酔方法などを見直すことに致しました。
今回は、これからの当院における妊娠初期の流産手術について、概略を説明します。

 

  • 前処置

原則として、手術当日はお食事を召し上がらず、朝9時にご来院頂きます。ただし、お水・お茶・スポーツ飲料はご来院時までお飲み頂いても結構です。
ご来院後、内診および経腟超音波検査を行い、子宮頚管を広げるため、ラミセル(3mm)という特殊な棒状のスポンジを挿入します。頚管への挿入時、多少痛みがある方もいらっしゃいますが、通常次第に和らぎます。
前処置後は病室(原則として個室)でお過ごし頂きます。
手術の約30分前になりましたら、より安全に手術をするための前投薬(硫酸アトロピン0.5㎎)を筋肉注射します。

 

  • 主な麻酔法

昼頃、看護スタッフが手術室にお連れ致します。
手術台に横になって頂き、水分補給や血管確保のため点滴を入れ、心電図、血圧計、動脈血酸素飽和度など各種モニターを装着します。
麻酔法ですが、現在当院では以下のように行っております。

(1)プロポフォール静脈注射

「プロポフォール注」は比較的副作用が少ない麻酔薬であるため、今までは当院の主流でした。しかし、諸般の事情で入荷困難が続いているため、最近では妊娠10週以降の方で、子宮内容が多く手術時間が長くなる可能性がある場合に限り、使用しています。

(2)ソセゴン・ホリゾン静脈注射

鎮痛薬の「ソセゴン注」と抗不安薬の「ホリゾン注」を用いる麻酔法です。「ホリゾン注」を多量に使用すると、呼吸を抑制してしまう可能性があるため、呼吸状態に注意しながら必要最小限の量を使用しています。

(3)傍頚管ブロック

「1%キシロカイン注」を子宮頚部に4か所注射する方法です。局所麻酔ですので目が覚めている状態であり、術後は比較的早くお帰り頂けます。
もし術中に痛みが強くなった場合には、「ソセゴン注」または「ホリゾン注」を使用することもあります。

 

  • 手術方法


    (1)妊娠10週未満の場合

妊娠10週未満の場合、手動真空吸引法(MVA)による子宮内容除去術を行っています。世界的に推奨されている、比較的合併症が少ない方法です。


(2)妊娠10週以上、妊娠12週未満の場合

妊娠10週以上、12週未満の場合、妊娠組織が多いため、当院では胎盤鉗子および電動真空吸引法(EVA)にて子宮内容除去術を行っています。

 

退院診察では内診、経腟超音波検査を行い、全身状態および子宮内に異常がないことを確認してからご退院となります。
術後は1週間後、および6週間後頃に受診して頂きますが、予約日までに強い下腹部痛や大量出血がみられた場合は拝察します。
その他、手術の詳細につきましては、個々の状況によって変わってきますので、診察時に説明させて頂きます。