院長コラム

当院における不妊症検査

当院は不妊症専門施設ではないため、対応できる不妊症検査項目は限られています。
今回は、「産婦人科診療ガイドライン婦人科外来編2020」(日本産科婦人科学会・日本産婦人科医会編)で推奨されている「不妊症の原因検索としての一次検査」の項目について、当院での現状について説明します。

 

〇基礎体温測定:行っています

基礎体温測定は不妊症検査の基本となるため、当院では妊娠をご希望される方全員に行っています。
低温相と高温相に分かれている2相性のグラフであれば、排卵の時期を推定致します。
高温相が10日未満であれば、「黄体機能不全」の可能性があるため、ホルモン検査を行います。
基礎体温が1相性で無排卵が疑われる場合は、「卵巣機能不全」として諸検査を進めていきます。

 

〇超音波検査:行っています

経腟超音波検査は、子宮内膜や卵胞(卵子を入れている袋)を観察するために必須です。
また、子宮筋腫や卵巣腫瘍などの疾患がないかどうか、経腟超音波で調べることも大切であり、腫瘍の状況によっては不妊検査・治療よりも先に、腫瘍の精査・治療が必要になります。
その場合、当院では東京医療センター、東邦大学医療センター大橋病院などの高次施設へ紹介しております。

 

〇内分泌検査(血液検査):行っています

基礎体温測定で順調に排卵が見られている場合、月経周期3~7日目に卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体化ホルモン(LH)、エストラジオール(E2:卵胞ホルモン)を検査します。
もし、月経不順、排卵遅延、無排卵、無月経などの月経異常が見られた場合は、上記3項目に加え、プロラクチン(PRL)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)、甲状腺ホルモン(fT3,fT4)も検査します。
また、基礎体温の高温相が短い場合は、高温相の中期にプロゲステロン(P4:黄体ホルモン)を検査し、黄体機能不全の有無を確認します。

 

〇クラミジア検査:行っています

クラミジア検査には、血液検査で行うクラミジア抗体検査(IgG,IgM)と子宮頚管クラミジア核酸増幅検査がありますが、不妊のスクリーニング検査としては抗体検査が勧められています。
クラミジア抗体が陽性の場合、過去に治療したことがなければ、ご本人に対して抗生剤内服治療を開始致します。
パートナーには泌尿器科への受診をお勧めします。

 

〇卵管疎通性検査:行っていません

〇精液検査   :行っていません

〇頚管因子検査 :行っていません

 

これら3つの検査は不妊症一次検査の中でも、より専門的であるため、当院では行っておりません。
精液検査については、ご主人に泌尿器科を受診して頂くこともありますが、多くの場合、これら3つの検査は不妊症専門施設で受けて頂くことをお勧めしています。

 

 

不妊症専門施設の敷居が高いと思われるカップルで、母体年齢が35歳以下、不妊期間が1年未満の方の場合、お気軽に当院を受診頂ければと思います。
ただし、母体年齢が38歳以上で、不妊期間が2年以上であれば、初めから不妊症専門施設をお訪ねになる事をお勧めします。