院長コラム

将来妊娠を希望される方の子宮筋腫の対応

近年の晩婚化・晩産化に伴い、妊娠をご希望される方のご年齢が、子宮筋腫好発年齢に近くなってきております。そのため、妊娠する前に子宮筋腫が認められることも少なくありません。
今回は、「産婦人科診療ガイドライン婦人科外来編2020」を参考に、将来妊娠を希望される方の子宮筋腫の対応について説明します。

 

子宮筋腫が妊娠・分娩に与える影響

子宮筋腫はその発生場所により、粘膜下筋腫(子宮内膜を圧迫)・筋層内筋腫・漿膜下筋腫(子宮の外側)に分類されます。
子宮内腔を変形させるような粘膜下筋腫や筋層内筋腫がある場合、受精卵が子宮内膜に着床しづらくなるため、不妊の原因となる可能性があります。
また、子宮内膜を圧迫していない漿膜下筋腫であっても、流産との関連がいわれています。
その他、子宮筋腫が妊娠・分娩に与える影響として、切迫早産・胎位異常・前置胎盤・常位胎盤早期剥離・陣痛異常・異常出血・悪露排出障害などが知られています。
そのため、妊娠前に子宮筋腫の対応を検討することがとても大切になります。

 

子宮筋腫が5~6cmまでであれば経過観察

前述の妊娠中・分娩時の合併症の頻度は、子宮筋腫の大きさが5cm以上で増加するといわれています。そのためガイドラインでは、子宮筋腫の長径5~6cmを治療方針決定の目安にしています。
つまり、無症状で長径が5~6cm以内の筋腫が一つであれば経過観察が推奨されています。
一方、子宮筋腫が多発している場合、疼痛などの症状を認める場合、長径が5~6cmを超える子宮筋腫の場合などは、積極的な治療が望ましいと考えられます。

 

手術療法と薬物療法

子宮筋腫の治療法には、大きく手術療法と薬物療法があります。
当然子宮を温存しないといけないため、手術は子宮筋腫核出術の一択になります。筋腫核出術後は3~6か月の避妊期間を設けるケースが多いため、特に高年齢の女性の場合は早めに方針を決定することが望ましいと思われます。さらに、筋腫核出術後の再発は15~30%といわれているため、術後の避妊期間が明けたら、積極的に妊娠を考えた方がいいかもしれません。
子宮筋腫に対する薬物療法は、子宮筋腫増大に関連しているエストロゲンを減少させる方法、つまり「偽閉経療法」が主に行われています。特に、内服薬である「レルミナ錠」は治療開始からエストロゲン低下の期間が短いため、数ある偽閉経療法の中でも主流になっています。
ちなみに、まず偽閉経療法で筋腫を小さくしてから、子宮筋腫核出術を行うケースも少なくありません

 

妊娠のご希望がある方の場合、多くのことを検討して、子宮筋腫の治療方針を決定する必要があります。
具体的な妊娠の予定がない方でも、子宮筋腫をお持ちの性成熟期女性の方は、主治医の先生と妊娠に向けての対応について、一度ご相談されることをお勧めします。
当院では必要に応じて、手術可能な高次施設や不妊治療専門施設などを紹介しております。