院長コラム

将来の妊娠を見据えた思春期女性の健康課題対策 ~性感染症~

性行為による感染症を性感染症といい、ほとんどが妊娠に悪影響を及ぼします。
もちろん、妊娠中の管理、治療は重要ですが、妊娠前から性感染症の予防や治療に力を入れることは非常に大切です。
今回は、「周産期医学2021年4月号」などの内容を参考に、思春期女性の健康課題でもある「性感染症」についてお伝えします。

 

特に注意が必要な性感染症

クラミジア感染症

性器クラミジア感染症は男女ともに最も多い感染症で、性感染症全体の約40%を占めます。
女性の場合、クラミジア病原体が性交によって子宮頸管に感染し、子宮内腔、卵管を通って腹腔内へ進展する可能性があります。進展すると、卵管の通りが悪くなり、不妊症や卵管妊娠の原因になることが知られています。
また、分娩までに治療をしていないと、赤ちゃんが産道を通る時に感染してしまい、新生児クラミジア結膜炎・咽頭炎・肺炎を生じることがあります。
クラミジア頸管炎は自覚症状が乏しいため、無治療で放置されることが多く、いかに予防するかが非常に重要です。

 

尖圭コンジローマ

尖圭コンジローマはヒトパピローマウイルス(HPV)による感染症で、外陰部、膣壁、子宮頚部や肛門周囲などにイボを形成する病気です。
もし分娩中、産道にイボが形成していた場合、赤ちゃんは産道を通る時に大量のHPVにさらされるため、咽頭部にHPVが感染することがあります。
出生後、咽頭部にイボが発生し(若年性再発性呼吸器乳頭腫症)、窒息してしまうケースもあります。

 

外陰ヘルペス

単純ヘルペスウイルスによる感染症で、女性の性感染症の中では性器クラミジア感染症に次いで第2位となっています。
初感染では外陰部に潰瘍や水疱などの病変が多発し、発熱・激しい疼痛、足の付け根のリンパ節の腫脹や圧痛が認められます。
一度感染すると、完全にウイルスを排除することができず、免疫力の低下などにより何度も再発する、厄介な感染症です。
産道に病変がみられた状態で経腟分娩すると、赤ちゃんが先天性ヘルペスウイルス感染症となる可能性があります。これは、致死率、神経学的恋勝率が高いため、感染状況により帝王切開が選択されますが、100%防ぐことはできません。

 

性感染症の予防は

100%完全な性感染症の予防は「性行為を行わないこと」です。原則として、彼氏がいるかどうかにかかわらず、思春期には性行為を行わないことが大切です。
もし、性行為を行うのであれば、必ず特定のパートナーとだけにしましょう。不特定多数との性行為により感染リスクは高まります。
そして、性行為を行う際には、相手の男性に必ずコンドームを装着してもらいましょう。完全に性感染症を予防することはできませんが、かなりリスクを抑えることができます。
また、尖圭コンジローマ予防のため、できれば性交を経験する前にHPVワクチン(4価または9価)を接種しましょう。もちろん、性交経験後でも効果はありますので、思春期のうちに接種することをお勧めします。

 

性感染症の中には治療が難しいものや、再発しやすいものも少なくありません。
将来妊娠する、しないに関わらず、性感染症に感染すると、生活の質は下がりメンタル的にも辛くなります。
是非、思春期から性感染症予防の意識を持つようにしましょう。