院長コラム

妊婦さんの咳・痰を伴う感冒と漢方薬

令和5年6月現在、新型コロナウイルス感染やインフルエンザウイルス感染だけでなく、通常のかぜウイルスによる感染も広がっているようです。
妊婦さんも例外ではなく、風邪をひいてしまい、咳や痰で辛い思いをされている方も少なくありません。
西洋薬である鎮咳薬(メジコン錠など)、去痰剤(ムコダイン錠など)は妊娠中でも比較的安全に使用できますが、漢方薬の服用が有効な場合もあります。
今回は、「株式会社ツムラ」さんの資料などを参考に、妊婦さんの咳・痰に対する漢方薬について、情報を共有したいと思います。

 

水様の痰を認める風邪のひき始め=小青竜湯(ショウセイリュウトウ)

水様性の痰や鼻汁といった感冒症状に使用される漢方薬です。
当院では、症状の出始めた頃に1週間ほど処方することが多く、咳や痰が多い場合は、メジコン錠やムコダイン錠を併用することもあります。

 

痰が切れにくい咳=麦門冬湯(バクモンドウトウ)

痰が切れにくい咳や気管支炎に使用する代表的な漢方薬です。
急性期だけでなく、長引く方にも有用で、当院では西洋薬で症状が持続する方にも処方することがあります。

 

痰が多く出る咳が長引く=清肺湯(セイハイトウ)

麦門冬湯が、切れにくい痰の乾いた咳(乾性咳嗽)に用いられるのに対し、清肺湯は、痰が多く出る湿った咳(湿性咳嗽)に対する代表的な漢方薬です。
主に、慢性期に用いることが多いようで、当院でも小青竜湯が無効な湿性咳嗽の方に処方することがあります。

 

咳や痰が長引き、安眠できない=竹筎温胆湯(チクジョウンタントウ)

咳や痰が長引くことで安眠できない方には、竹筎温胆湯を処方することがあります。
特に体力が低下しており、精神的にも不安感が強い方に有用とのことです。

 

胃腸虚弱な方の咳や痰がやや長引く=参蘇飲(ジンソイン)

上記の漢方薬を服用しているにも関わらず咳が長引いている場合、特に胃腸が虚弱の方に対しては、参蘇飲に切り替えることが勧められるようです。
悪心・嘔吐などがある場合にも有用であるため、つわりと感冒が重なってしまった妊娠初期の方にはいいかもしれません。

 

その他にも、感冒や気管支炎で使用する漢方は多く、体質や症状などに応じて使い分けています。
当院では、妊婦さんの感冒症状に対して、西洋薬と漢方薬を併用することも少なくありません。
妊婦さんが服用しても大丈夫な薬剤を処方致しますので、必要以上に服薬を恐れず、お母さんのためにも、お腹の赤ちゃんのためにも、しっかり感冒症状を抑えるようにしましょう。