院長コラム

女性のライフステージごとの鉄欠乏性貧血

血液の中には、全身に酸素を送り届ける「ヘモグロビン」が存在しており、血中ヘモグロビン濃度が低下した状態を貧血といいます。
鉄はヘモグロビンの材料になっており、鉄が不足するとヘモグロビンが作られず、貧血となります。これを鉄欠乏性貧血といい、治療として鉄剤の内服または静脈注射(点滴)が行われます。
女性は男性に比べて鉄欠乏性貧血になりやすいのですが、その背景はライフステージごとに変わってきます。
今回、「あすか製薬株式会社」の資料などを参考に、女性のライフステージと鉄欠乏性貧血について情報共有したいと思います。

思春期:月経の開始とダイエットなど

思春期は体の成長に伴い、鉄の消費量が増加するだけでなく、月経が始まるため鉄欠乏性貧血になりやすい時期です。
特に、食事制限によるダイエットを行っている女性は、鉄の摂取量も低下するため、貧血が重症化することも少なくありません。

性成熟期~更年期:過多月経、消化管疾患など

20代から閉経までの女性の中には、子宮筋腫・子宮腺筋症・子宮内ポリープといった婦人科系疾患が原因で、過多月経を認める方もいらっしゃいます。
また、胃潰瘍や十二指腸潰瘍、痔核が原因で消化管出血を認める方もいらっしゃいます。
どちらも、鉄の摂取量よりも消費量(喪失量)が多くなれば鉄欠乏性貧血となります。

妊婦さん・授乳婦さん:赤ちゃんへの鉄の移行など

妊娠中は、お母さんの鉄が胎児に移行するため鉄の消費量が増大することに加えて、血液中の水分の増量に伴い血液が薄まるため、貧血となる妊婦さんは少なくありません。
また、分娩時に出血が多いと、産後に貧血が悪化する事があります。
更に、授乳される方は母乳を通して赤ちゃんに鉄が移行するため、貧血による疲労感や抑うつなどに注意が必要です。

女性は生涯を通じて鉄欠乏性貧血のリスクが高く、貧血がみられた場合は積極的な治療が必要です。
同時に、貧血の原因となっている病気があるのならば、その治療をしなければ貧血は改善しません。
まずは、思春期から鉄分を含んだ食材を積極的に摂取するなど、栄養バランスのとれた食生活を継続するよう心がけましょう。