院長コラム

多嚢胞卵巣症候群(PCOS)の方が妊娠を希望された場合の対応

多嚢胞卵巣症候群(PCOS)は生殖年齢女性の5~8%にみられる疾患で、排卵障害により月経不順をきたし、不妊の原因の一つと言われています。
今回、PCOSの方が妊娠をご希望された場合の、当院の対応について説明します。

 

肥満(BMI≧25)の方には糖尿病検査・減量指導

PCOSの方は、糖尿病の素因を持つことがあり、肥満症を合併することも少なくありません。BMI  (体重〈㎏〉÷身長〈m〉÷身長〈m〉)が25以上の方には、随時血糖、HbA1cなどの血液検査で、糖尿病の傾向がないかどうか確認し、必要に応じて糖尿病専門医へ紹介します。
糖尿病が否定された場合は、減量など生活習慣の見直しを指導致します。肥満は排卵障害だけでなく、妊娠してからの産科合併症や難産の原因になるため、妊娠をお考えの際にはBMIを25未満にすることが重要です。「産婦人科ガイドライン婦人科外来編2020」では、2~6か月間で5~10㎏の減量が推奨されています。
尚、肥満の方の場合、減量するだけで排卵が認められることも多いのですが、当院ではBMIが25未満になるまで、妊娠に向けたタイミング指導は行っていません・

 

基礎体温で無排卵・排卵遅延の方には排卵誘発

BMIが25未満の方の場合、基礎体温を連日つけて頂いて排卵の有無を確認します。
無排卵周期症や排卵が大きく遅延している方の場合、排卵誘発剤「クロミッド錠」を用いて卵胞を発育させます。月経5日目から1日1錠5日間で始め、卵胞の発育が不良の場合は1日2錠5日間に増量します。
1つの卵胞が18mm以上に大きくなった時点でhCG注射により排卵を促し、タイミング指導を行います。
ただし、成熟した卵胞が複数個あると、多胎妊娠を引き起こす可能性があるため、18mm以上の卵胞が複数個認められた場合、その周期のタイミングは原則中止と致します。

 

クロミッドで排卵しない場合は不妊専門施設へ

クロミッド錠1日2錠5日間の服薬でも卵胞が発育しない場合は、クロミッド錠の増量(保険診療外)や他剤への切り替えなどの必要があります。それ以上の治療は当院よりも不妊専門施設での対応が望ましいと考え、近隣またはご希望の施設へ紹介させて頂きます。
また、卵胞は発育するものの、4回以上タイミング指導を行っても妊娠に至らない場合も、不妊専門施設での診察をお勧めしています。

 

PCOSは月経不順、無月経の方に多く見られます。
もし、月経異常がありましたら、妊娠をご希望する前から婦人科を受診しましょう。
経腟超音波検査や各種ホルモン検査を受けて頂き、診断・治療して頂くことをお勧めします。