院長コラム

在宅で過ごす子どもの栄養と健康問題

新型コロナウイルス感染予防のため、自宅で過ごさざるを得ない子どもたちの健康問題が注目されています。今回は、特に小学生から中学生のお子様をお持ちのお母様を対象に、「日本医師会雑誌2020年8月」の『平日を在宅で過ごす子どもの食・栄養・健康の問題と対応』から、特に重要な栄養素「カルシウム」「鉄」「ビタミンB1」「ビタミンD」「食物線維」の欠乏対策について、情報を共有したいと思います。

 

  • カルシウム

カルシウムが欠乏すると骨密度低下・骨粗しょう症・しびれ・筋力低下・痙攣などがみられます。
1日のカルシウム摂取量が600mgを下回ると欠乏症リスクとされ、給食での牛乳がある場合はリスク者の割合が約25%であるのに対し、牛乳がない場合は67%と高率になります。牛乳コップ1杯でカルシウムは約200mg摂取できるため、とても効率的です。
給食がない日は牛乳、あるいはヨーグルト、チーズなどを積極的に摂取しましょう。
牛乳アレルギーのあるお子さんの場合は、豆乳調製乳、がんもどき、豆腐などがよいとのことです。

 

不足すると貧血、食欲不振、顔色不良、爪の変形などがみられます。
鉄はレバー、牛ヒレ肉、あさり、緑黄色野菜、大豆などに豊富です。
また、大豆製品や野菜に含まれる鉄の吸収をよくするためには、ビタミンCの多いトマトや柑橘類などを一緒に摂るといいようです。

 

  • ビタミンB1

不足すると全身倦怠感・浮腫・歩行障害などがみられます。
ビタミンB1は糖代謝に必須の栄養素で、糖分摂取が増加するとその必要量が増えます。近年、糖分を含むイオン飲料などを飲み過ぎて、ビタミンB1欠乏になってしまうケースが増えているそうです。
ビタミンB1欠乏を防ぐためには、糖分を含む清涼飲料水などの摂取を制限し、ビタミンB1を多く含む食品(豚肉、うなぎ、たらこ、豆類など)を摂取しましょう。
また、ビタミンB1強化米(普通の米の約20倍の濃度)を使用することも勧められています。

 

  • ビタミンD

欠乏すると小児の場合はO脚やX脚、成人の場合は骨粗しょう症となり、骨折をきたしやすくなります。ビタミンDは紫外線を浴びると皮膚で合成されます。
そのため、ビタミンD欠乏を防ぐためには、ビタミンDが豊富な食品(魚類、きのこ類、うなぎなど)を積極的に摂取するだけでなく、日光に当たるようにしましょう。
目安は1日1回、夏季は約30分(日陰)、冬季は約60分です。ただし、この時期は熱中症に十分注意してください。

 

  • 食物線維

不足すると便秘になるため、野菜(ごぼう・ニンジン)、海藻類、こんにゃく、寒天など、食物線維が多く含まれる食品を摂取するようにしましょう。
また、運動量の減少、不規則な生活リズムも便秘の要因になります。規則正しい生活と運動習慣も心がけるようにしましょう。

 

思春期は体が急激に成長する大切な時期です。
不足しがちな栄養素を豊富に含んだ食品を使い、バランスの取れた料理でお子様の健康を支えて差し上げて下さい。