院長コラム

血栓症予防のため、低用量ピル服用中の方はこまめに水分補給を

血管内に血の塊(血栓)が詰まる病気を血栓症といい、緊急な対応が必要な重篤な疾患です。動脈の血栓症には脳梗塞・心筋梗塞などがあり、静脈の血栓症である静脈血栓塞栓症(深部静脈血栓症と肺血栓塞栓症の総称)は、“エコノミークラス症候群”で知られています。
実は、エストロゲンを含むホルモン剤は血栓症のリスク因子となります。今回は、避妊目的で低用量ピル(OC)、月経困難症や子宮内膜症の治療目的で低用量エストロゲン・プロゲスチン配合剤(LEP製剤)を服用中の方を対象に、血栓症の症状と対策について説明します。

 

静脈血栓塞栓症の原因

静脈内に血栓が生じる原因として、「静脈の血行不良となっていること」と「血液が固まりやすい状態になっていること」が考えられます。
例えば、長時間のフライトなどで同じ姿勢のままで動かずにいると、血の流れが悪くなります。あるいは、運動や猛暑によって大量の汗をかいて脱水状態になってしまうと、血液がドロドロとなり血行不良となります。
また、OCやLEP製剤に含まれているエストロゲンは血液を固める性質があるため、頻度は少ないものの、OC・LEP製剤服用中の方は血栓症は注意が必要です。
ちなみに、OC・LEP製剤を服用しておらず、妊娠もしていない方の血栓症発生数は1万人に1~5人であるのに対し、OC・LEP製剤服用者では3~9人と若干増加します。

 

血栓症を疑う症状

  • 突然の足の痛み・腫れ・発赤・熱感(特に片側のふくらはぎ)
  • 手足の脱力・マヒ
  • 突然の息切れ
  • 押し潰されそうな胸痛
  • 激しい腹痛
  • 激しい頭痛
  • 舌のもつれ、しゃべりにくい
  • 突然の視力障害(見えにくいところがある、視野がせまくなる)

このような症状が出現しましたら、OC・LEP製剤の服用を中断し、処方されている「かかりつけ医」などに連絡の上、受診して下さい。

 

血栓症の予防法

OC・LEP製剤の服用中の方は、熱中症予防だけでなく血栓症予防のためにも、こまめな水分摂取を心がけるようにしましょう。また脱水になるような激しい運動は控えることをお勧めします。
ただし、体を動かさないでいることもよくありません。飛行機、電車、自動車などで長時間移動する際はもちろん、外出を自粛し自宅で過ごされる場合も、定期的に下肢を動かすような運動を積極的に行い、血行を促すようにしましょう。

 

 

まだまだ猛暑が続きます。十分に水分を摂取し、血栓症の予防に心がけましょう。
また、タバコは血栓症のリスク因子ですので、少しでも喫煙している方は“完全禁煙”を目指しましょう。