院長コラム

分娩後の後陣痛・創部痛の対応

陣痛の痛みを乗り越えて赤ちゃんを産んだ後、後陣痛や創部痛に辛い思いをされている方もいらっしゃいます。
今回は、分娩後の後陣痛・創部痛の対応について説明します。

 

後陣痛(後腹:あとばら)とは

胎児・胎盤が娩出した後の子宮収縮を後陣痛といい、この子宮収縮のおかげで胎盤剥離面からの出血が止まります。つまり、後陣痛は非常に重要な生理的な現象です。
一般的に初産婦さんより経産婦さんの方が、子宮収縮に伴う疼痛が強くなる傾向があります。
また、授乳時、乳頭が刺激されると、脳からオキシトシンというホルモンが分泌され、子宮の収縮が促されることにより、疼痛が増強することもあります。

 

後陣痛が強い時の対応

後陣痛自体は必要な痛みですが、痛みが強くて心身が休めない時は、処置・治療が必要になります。
当院では、児が娩出後、点滴から子宮収縮薬「オキシトシン注」を投与し、弛緩出血を予防していますが、後陣痛が強く、子宮出血が少ない場合は、子宮収縮薬の投与を緩めることや中止することがあります。
治療薬としては消炎鎮痛剤を用います。非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)は、鎮痛作用に加えて子宮収縮抑制作用も有しているため、後陣痛の治療として大変有用です。
当院では、主にロキソニン錠の内服で経過観察していますが、効果が不良の場合はボルタレン坐薬を使用しています。

 

会陰創部痛の対応

当院では、児の娩出に伴う会陰切開や裂傷部の縫合には、吸収糸を利用しています。通常、1~2週間後には緩んで解けるため、必ずしも抜糸の必要はありません。ただし、縫合後創部の疼痛が強い方には、ロキソニン錠を2~4日間処方しています。
それでも疼痛や引きつり感が持続する場合には、分娩後3~4日目の退院診察の際に縫合糸を抜糸するようにしています。

 

下腹部痛・創部痛が激しい場合や鎮痛剤の効果が不良の場合は、子宮破裂、血種、細菌感染など、重篤な病態が隠れている可能性があります。
その際、当院で適切な処置を行い、状況に応じて高次施設へ救急搬送する場合もございます。
分娩後の疼痛が気になる方は、ご遠慮せずに医師・助産師へお伝え下さい。