院長コラム

働く女性の更年期障害

ある報告によると、現在わが国の就業者における女性の割合は、約45%といわれており、今後更に増加していくことが予想されています。
しかし、女性特有の疾患に対する理解が社会に行き渡っているとは言えず、特に更年期障害については重要視されていないように思えます。
今回は、「よぼう医学 春号」の特集記事を参考に、働く女性の更年期障害が仕事に与える影響について、情報を共有したいと思います。

 

更年期障害とは

閉経前の5年間と、閉経後の5年間を合わせた10年間を更年期と呼びます。その更年期に、他の疾患によるものでない様々な症状を更年期症状といい、日常生活に支障をきたすものを更年期障害と定義されています。
症状は多彩で、ほてり・発汗・動悸・肩こり・腰痛・めまいといった身体症状、抑うつ・いらいら・不安・不眠・意欲低下などの精神症状が代表的なものです。

 

更年期女性の心理的・社会的要因

更年期障害は、エストロゲン(女性ホルモン)の低下や加齢変化といった「生物学的要因」、生来の器質などの「心理的・性格的要因」、そして更年期特有の「社会的・環境的要因」がそれぞれ複雑に絡み合って生じます。
心理的・社会的要因として、夫の退職や病気、子供の自立、両親の介護などがいわれており、特に働く女性の場合、仕事上の責任・職場における人間関係などが加わります。

 

年間4200億円の損失

このような更年期障害は日常生活に支障をきたすだけでなく、仕事のパフォーマンスも低下することが知られています。
経済産業省の報告によると、女性従業員の約20%が更年期障害のため勤務先で困った事があると回答したそうです。
また、別の調査では、約15%の女性が、更年期障害のために離職、降格、昇進の辞退などを経験しているとのことです。
更にある研究では、女性の更年期離職による経済損失は、年間4200億円にも上ると試算されており、更年期障害は今や国全体として取り組むべき問題となっています。

 

更年期障害は適切に治療することで、少なくとも生活や仕事に悪影響を及ぼさないレベルまで、症状を軽快させることが期待できます。
「気のせい」「お年頃だから仕方ない」と思わずに、是非婦人科を受診しましょう。
そして、職場やご家庭に更年期障害にお悩みの方がいらっしゃいましたら、是非婦人科受診をお勧め下さい。