院長コラム

ジエノゲスト(黄体ホルモン剤)による精神症状と漢方薬

子宮内膜症や月経困難症に対する治療として、ジエノゲスト内服が広く行われています。
偽閉経療法に比べて血中のエストロゲン濃度を下げ過ぎないことから、ジエノゲストは長期にわたって安全に使用できる薬剤といわれています。
ただし、不正出血などの副作用を認めることも少なくありません。
今回は、副作用の中でも精神症状に注目し、「産婦人科 漢方研究のあゆみNo.39」を参考に、情報共有したいと思います。

 

ジエノゲストによる精神症状

一般的に、ジエノゲストの服用開始後数か月で精神症状が現れることが多く、添付文書では副作用として不眠、不安、抑うつが記載されています。
ある研究では、気分の落ち込み、不安、不眠、イライラ、倦怠感などの精神症状が、ディナゲスト錠(2㎎/日)服用後1~2か月で出現し、漢方薬投与1~3か月でその効果が出始めた、と報告されています。
以下に、精神症状で使用されることがある漢方薬をお示しします。

 

〇加味逍遙散(カミショウヨウサン)

加味逍遙散は更年期障害や月経前症候群の精神症状に使用することが多い漢方薬です。
疲労感が強く、不安、いらいらといった症状が次々に移り変わるような場合に有用です。
当院では、多彩な精神症状がみられる場合の第一選択薬として処方しています。

 

〇加味帰脾湯(カミキヒトウ)

精神症状の中でも、抑うつや不安感が強い方に使用することが多い漢方薬です。
また、元気にさせる生薬が含まれており、疲労感が強い方に特にお勧めです。
当院では、加味逍遙散の服薬でも抑うつや疲労感が継続する場合、加味帰脾湯へ切り替えることが多いです。

 

〇抑肝散(ヨクカンサン)

抑肝散は、緊張やイライラ感が強く、怒りっぽい方に用いることが多い漢方薬です。
頓服でも有効なことが多く、加味逍遙散との併用で効果の増強が期待できます。
尚、慢性的ないイライラ感に対しては、胃腸に優しい抑肝散加陳皮半夏(ヨクカンサンカチンピハンゲ)を長期にわたって使用することがあります。

 

ジエノゲストの副作用は多岐にわたるため、様々な漢方を症状にあわせて処方しています。
当院では、出血と精神症状がみられる方には黄連解毒湯(オウレンゲドクトウ)、夏バテしている方には補中益気湯(ホチュウエッキトウ)なども使用しています。
ジエノゲストは非常に有用な薬剤ですので、服薬を継続して頂くためにも、漢方薬にて副作用をコントロールすることは非常に重要であると考えています。