院長コラム

サルコペニアと中高年女性の健康リスク

加齢伴う筋肉の減少を「サルコペニア」といい、様々な疾患を引き起こすことが知られています。
今回は、医学情報誌「メディカルトリビューン」(2021年3月21日)の記事と、先日WEB開催された日本女性医学学会ワークショップの講演内容を参考に、サルコペニアと中高年女性の健康リスクについて情報共有したいと思います。

 

サルコペニアで死亡リスク、要介護リスクが増加

我が国のある研究によると、65歳以上の高齢者のサルコペニアの有病率は男性が11.5%、女性が16.7%で、女性の方が高い結果でした。
また、サルコペニアの女性は、そうでない方に比べて、全死亡リスクは2.3倍、要介護リスクは1.7倍も高くなったとのことです。
尚、認知機能の低下や抑うつ症状の出現もサルコペニアに関連しているとの報告もされています。

 

サルコペニアと糖尿病・アルツハイマー型認知症

国内のある調査によると、年々認知症が増加しており、中でもアルツハイマー型認知症が多く、しかも男性よりも女性の方が多いと報告されています。
また、糖尿病が増加すると、アルツハイマー型認知症も増加するとの報告があり、アルツハイマー型認知症の増加の背景として、糖代謝異常が注目されています。
さらに、男性よりも女性の方が多い理由について、サルコペニアも要因の一つとして考えられています。
つまり、サルコペニアにより筋力が低下し、生活活動量が減少することで糖尿病になりやすくなり、その結果アルツハイマー型認知症が増加する、といった可能性が考えられています。

 

サルコペニアの予防と改善

サルコペニアの予防と改善は、糖尿病の予防になり、それがアルツハイマー型認知症の予防に繋がります。さらに死亡リスク、要介護リスクが軽減することも期待できます。
サルコペニアの予防と改善のためには、定期的な運動習慣を身につけ、大豆・大豆製品・緑黄色野菜・海藻類・牛乳・乳製品・魚などをバランスよく摂取することが大切なようです。
また、エストロゲンには筋組織の増殖や修復に関与しているといわれており、更年期のホルモン補充療法が筋力や運動能力の維持に有効であるとの報告もあります。
さらに、人参養栄湯という漢方薬は、倦怠感の改善、体力増進、筋力改善、食欲亢進などが期待できるため、疲労感や体力低下の自覚がある方は、服薬を検討してもいいかもしれません。

 

女性にとってサルコペニアは、様々な健康リスクの原因となっています。
健康寿命を延ばすためには、サルコペニア対策がとても重要です。
特に更年期以降の女性は、運動や食生活などの生活習慣の改善を心がけましょう。