院長コラム

ゴールデンウィークに旅行される妊婦さんへ

いよいよ最長10連休のゴールデンウィークが始まりました。ご家族でご旅行や帰省される妊婦さんも多いのではないでしょうか。
旅先やご実家で心身ともにゆっくり過ごされることは、母体にとっても、胎児にとっても大変いいことです。しかし、妊婦さんならではの注意点があります。
今回は、特に妊婦さんが気を付けるべきポイントをお伝えします。

 

 

○ 切迫症状あれば、かかりつけ医の診察を

下腹部痛・性器出血や子宮頚管長の短縮がみられた場合、切迫流早産の可能性があります。かかりつけ医を受診し、旅行してもいいか、自宅での安静が必要か、ご相談下さい。

 

○ 自動車での移動の際は渋滞を避けましょう

自動車で移動される場合には渋滞に巻き込まれないように注意しましょう。腹痛や出血などの緊急の際、近くの病院に行くことすらできなくなる可能性があります。

 

○長時間のドライブやフライトの際は血栓症予防のため、「こまめな水分摂取」と「適度な運動」を

長時間のドライブや飛行機での移動では、下肢の静脈に血栓を作りやすくなってしまいます(エコノミークラス症候群)。特に妊婦さんは、生理的に血液が固まりやすい状態になっていますので、血栓症予防のため、水分をこまめに摂取し、定期的に下肢や体幹を動かすようにしましょう。

 

○ インフルエンザ再流行中!マスク・うがい・手洗いはしっかりと。

今年は4月中旬から寒暖差の激しい日々が続いているためか、免疫力が低下している方が多く、インフルエンザが再び流行しています。人混みを避け、マスク・うがい・手洗いで予防しましょう。

もし旅先で、インフルエンザに感染したかなと思ったら、内科を受診し診断してもらいましょう。ちなみに、抗インフルエンザ薬のタミフル、リレンザ、イナビルは妊婦さんでも使用可能です。

 

○ 特に風疹抗体価低値、麻疹抗体陰性の妊婦さんは人混み、飛行機は避けて

風疹や麻疹はいつ流行するか予測できません。風疹抗体価が低値の妊婦さんが妊娠20週までの間に風疹ウイルスに感染してしまうと、胎児に様々な影響(先天性風疹症候群:難聴、白内障、心奇形など)を及ぼします。また、麻疹抗体陰性の妊婦さんが初めて麻疹ウイルスに感染した場合、胎児死亡や流早産をきたす可能性があります。

原則として妊婦さんは皆さん、人混みには近づかないことが望ましいですが、特に風疹抗体価低値、麻疹抗体陰性の妊婦さんは、海外旅行や飛行機の利用も避けた方が無難です。

ちなみに、つい最近、都内で麻疹患者さんが発生しております。くれぐれもご注意下さい

 

○ 生ものや不完全な熱処理の肉は食べない

妊娠していない方にとっては問題ない飲食物でも、妊娠による免疫力の低下で胃腸炎を起こすことがあります。お刺身などの生ものは食べないようにしましょう。
また、不完全な加熱処理の肉、ジビエ料理、熏製、ナチュラルチーズなどはトキソプラズマやリステリアなど、胎児にも影響を及ぼす病原体の感染リスクがありますので、口にしないようにして下さい。
特に海外旅行では、生野菜、カットフルールなども避けた方が無難です。

 

○ 温泉は泉質に気を付けて、長湯し過ぎないように

温泉自体は妊婦さんが入っても問題ありませんが、泉質との相性などで皮膚炎をおこす妊婦さんもいらっしゃいます。比較的刺激の少ない温泉を利用する方がいいかもしれません。もちろん、衛生管理が行き届いている温泉場を選びましょう。

また、長い時間湯船に入っていると脳貧血や多汗による血液濃縮・血栓症などのトラブルに見舞われることがあります。体調と相談しながら、できるだけ短時間にした方がいいでしょう

尚、浴場は滑りやすくなっています。妊婦さんは反射神経やバランス感覚が低下します。もし転倒すると、骨折、脳出血、子宮破裂、常位胎盤早剥離など、母児の命に関わる状況にもなりかねません。くれぐれもご注意下さい。

 

 

楽しいはずの旅行が辛いものにならないように、上記のポイントに注意し、無理をしないでゴールデンウィークをごゆっくりお過ごし下さい。