院長コラム

「周産期メンタルヘルス研修会」に参加して

先日、日本周産期メンタルヘルス学会が主催する研修会に参加してきました。
午前中は産婦人科医と精神科医による講習会、午後は他施設の助産師さん、臨床心理士さんと私の3人によるロールプレイを中心とした研修です。今回私は初めての参加でしたが、様々な学びと気付きがありました。
今回は、この研修会で学んだ事を当院あるいはこの地域でどのように活かしていけばいいか、私の考えを交えて少しお伝えします。

 

 

周産期メンタルヘルス多職種の連携の問題点

精神的なトラブルを抱えている妊産婦さん、褥婦さんをサポートするには、産科医や助産師だけでなく、精神科医、小児科医、保健師、心理士など、多くの職種の専門家が協力して対応することが不可欠です。しかし、それゆえの問題点として「3つの連携不全要因」が指摘されています。

① 専門性

もともと人事交流の少ない医療の世界でもあり、診療科間や職種間、あるいは医療施設と行政との間には、どうしても壁が存在しがちです。
専門家集団同士の連携の問題は、小規模施設だけでなく、総合病院でも困難な場合があるようです。

② 時間軸

妊娠期、出産期、産褥期など、それぞれのステージよって携わる医療施設や従事者が変化し、そのため支援が細切りのリレーになりやすいと言われています。特に里帰り分娩の場合にはそれが顕著になります。

③ 空間軸

母児や家族が転居などで移動すると、中心となる支援機関が定まりにくくなります。特に自治体が変わるケースでは、支援が途切れてしまう原因になりかねません。

 

 

より良い連携を築くための当院の取り組み

世田谷区では、「母と子サポートネットワークせたがや」という、国立成育医療研究センターの先生を中心に、世田谷区内の産科医・精神科医・小児科医・助産師・保健師・子育てNPO法人担当者・行政担当者などの関係者から成る多職種連携の会があります。当院ではその会に以前から参加しており、症例検討会などの勉強会を通じて、他施設や行政と顔の見える連携を行っています。

また、帰省分娩される方や分娩前後に転居される方に関しては、我々や世田谷区の担当者から帰省先・転居先の自治体担当者へ、積極的に情報共有を行っています。

これからも多職種が十分に連携できるように、更に力を入れたいと思っています。

 

 

多職種連携の中で、特に注目されている職種が心理師です。臨床心理士の資格は今まで民間学会の資格でしたが、今年9月に第一回の国家試験が行われ、今後は「公認心理師」という名称で国家資格になります。メンタルヘルスの分野に対して、いかに国が力を入れているかがわかります。
今後は更に、公認心理士の方々にも積極的に周産期メンタルヘルスの分野に入って頂き、母と子、そして夫を含めたご家族を支えるために連携できれば、と考えています。