院長コラム

陰嚢の中に精巣(睾丸)がない「停留精巣」について

前回に引き続き、国立成育医療研究センターの小児外科の先生による講演会から、我々も1ヶ月健診で診断することがある「停留精巣」を取り上げます。

 

 

停留精巣とは

通常、妊娠初期に骨盤内に存在していた精巣は、妊娠中期から後期にかけて下降し、陰嚢内に収まります。

この下降は、ホルモン因子や環境因子など、多くの因子の影響を受けるため、時には本来の下降経路の途中で停溜することがあります。その状態を「停留精巣」といいます。

 

 

停留精巣の予後

停留精巣は正期産児の3%に認められるといわれており、生後2~3ヶ月で60~70%は自然に下降します。

 

 

停留精巣の問題点と治療法

将来的に停留精巣は精巣腫瘍の発症率が高く、妊孕性が低くなるといわれています。

経過観察で精巣が下降しない場合、妊娠6ヶ月~1歳前後に精巣固定術を行うことが一般的です。

これは、妊孕性の低下を予防し、精巣腫瘍の早期発見のための手術になりますが、残念ながら精巣腫瘍の発症率を下げることはないと言われています。

 

 

停留精巣との鑑別が必要な「移動性精巣」

精巣を陰嚢底部まで引き降ろす事ができ、しばらくそのままの位置を維持できれば移動性精巣といい、すぐ精巣が挙上してしまえば停留精巣と診断されます。

移動性精巣は5~7歳に好発し、思春期には自然に陰嚢内におさまるため、治療の必要はりません。

 

 

1ヶ月健診で停留精巣が判明した場合、あまり心配することはありませんが、その後はかかりつけの小児科の先生に診て頂き、必要に応じて国立成育医療研究センターなどの高次施設に紹介して頂きましょう。