院長コラム
過多月経による貧血は、子宮筋腫が原因かも知れません
子宮筋腫は30~40歳代によくみられる子宮筋の良性腫瘍で、20~25%の女性に発生するといわれています。
発生する場所や大きさにより、月経痛、過多月経、腫瘤感などを認めることがあります。
今回は、過多月経をきたす子宮筋腫について説明します。
子宮筋腫が過多月経を引き起こす理由
子宮内膜を圧迫するように子宮筋腫が存在していると、子宮内膜の剥離面が広がります。
その結果、剥がれ落ちる子宮内膜組織の量が増加するため、経血量が増えて過多月経となります。
子宮筋腫の治療
子宮筋腫の治療には、保存的治療と手術療法があります。
保存的治療には偽閉経療法、子宮動脈塞栓術(筋腫を栄養している血管を詰まらせ、筋腫を縮小させる方法)、集束超音波手術(子宮筋腫に超音波を集束させて壊死させる方法)があります。
手術療法には、子宮筋腫核出術と子宮全摘術があります。
当院では、手術療法が望ましいと判断した場合や、過多月経により重篤な貧血がみられる場合は、近隣の高次施設へ紹介します。
また、子宮動脈塞栓術、集束超音波手術をご希望の方には、限られていますが、行っている施設をご紹介致します。
当院での治療
当院では、ご年齢、挙児希望の有無、筋腫の大きさや貧血の程度などを踏まえ、以下の薬物療法を行っています。
(1) 偽閉経療法
最も一般的な治療法は偽閉経療法です。
エストロゲンという女性ホルモンの影響で子宮筋腫は大きくなりますが、一時的に卵巣から分泌されるエストロゲンを抑制する治療が偽閉経療法です。
月に一回の皮下注射や連日の点鼻薬使用を4~6ヶ月間にわたり行います。
ただし、それだけで子宮筋腫の根治を期待するのは難しいため、手術を行いやすくする目的で術前に行ったり、閉経間近の患者さんに対し自然閉経までの逃げ込み療法として行うことも多いです。
(2) 低用量エストロゲン・プロゲスチン配合剤(LEP)
過多月経だけでなく、月経困難症も認める方にはLEPを用いることがあります。
子宮筋腫を小さくすることはありませんが、子宮内膜を薄くし、経血量を少なくすることで、過多月経による貧血を防ぐことができます。
(3)子宮内避妊システム(IUS)
LEP以外にも、IUS(黄体ホルモンを子宮内に持続的に放出する子宮内避妊システム)を子宮内に挿入することで、内膜を薄くさせる方法があります。
ただし、子宮筋腫があることで、IUSが自然に脱出してしまう場合があるため、まずは偽閉経療法で子宮筋腫を小さくさせてから、IUSを挿入することを検討する場合もあります。
当院では、子宮筋腫による過多月経で貧血を来した方に対して、鉄剤などによる貧血の治療を行いながら、必要に応じて止血剤、漢方薬を用いることもありますが、基本的に偽閉経療法が治療の柱となっています。