院長コラム

若年女性の続発性無月経に対するホルモン治療 ~カウフマン療法~

これまであった月経が3か月以上こない事を続発性無月経といいます。続発性無月経には、エストロゲン(卵胞ホルモン)という女性ホルモンの分泌が正常なタイプ「第1度無月経」と、分泌が低下しているタイプ「第2度無月経」の2種類があります。
今回は、主に第2度無月経に対して行われる「カウフマン療法」について、「産婦人科navi vol.1」(
2020年5月)などを参考に説明します。

 

 

正常の月経周期とホルモン環境

正常な月経周期では、まず脳の視床下部から下垂体に向けて、あるホルモンが分泌されます。その作用で下垂体から卵胞刺激ホルモン(卵胞を発育させるホルモン)が分泌されると、しだいに卵胞が発育し、その卵胞からエストロゲンが分泌され増加します。
一旦エストロゲン量がピークを迎えた後、排卵を前に減少し始め、排卵を迎えます。排卵した卵胞は黄体という組織に変わり、プロゲスチン(黄体ホルモン)とエストロゲンの2種類のホルモンを分泌します。
もし妊娠しなければ黄体は退縮し、プロゲスチン・エストロゲンともに減少して、子宮内膜が剥がれ落ち、月経が始まります。
ちなみに、正常月経周期における平均血清エストラジオール(エストロゲンの一種)濃度は約100pg/mlとされています。

 

第2度無月経とカウフマン療法

摂食障害や過激なダイエットによる体重減少、激しい運動や過度のストレスなどがあると、視床下部から下垂体への命令系が上手く働かないことがあります。すると、卵胞が発育しないためエストロゲン量は低値となり、排卵も起こらず無月経となります。このような無月経を第2度無月経といいます。
第2度無月経の治療法として、「カウフマン療法」が広く行われています。カウフマン療法とは、正常の月経周期や女性ホルモン環境を人工的に作り出すホルモン療法です。
具体的には、エストロゲン製剤を数日間投与した後、さらに数日間エストロゲン製剤およびプロゲスチン製剤を併用投与し、休薬時に月経様の出血を起こさせます。この一連の流れを数か月間行うことで、治療後の「視床下部-下垂体-卵巣のホルモン動態」
の正常化を目的としています。

 

当院におけるカウフマン療法の具体的処方

当院では以下の流れで治療します。
①まず第2度無月経の方などに「プラノバール錠」(エストロゲンとプロゲスチンの合剤)を1日1錠5~7日間程服用して頂きます。
②服薬終了後、数日で出血が始まります。
③出血開始8日目頃から「プレマリン錠0.625mg」(エストロゲン製剤)1日2錠の服用を開始します(21日間)。
④初めの7日間はプレマリン錠のみを服用します。
⑤その後の14日間は、プレマリン錠に「デュファストン錠5mg」(プロゲスチン製剤)1日3錠を併用して頂きます。
⑥21日間の服薬が終了した後は7日間休薬しますが、その間に月経様の出血が始まります。
⑦7日間の休薬が終わりましたら、月経様出血の有無に関わらず、再び③のプレマリン錠の服用に戻ります。
このサイクルを3クール程繰り返し、その後1~2か月間休薬した状態で、自然に排卵・月経が認められるかを基礎体温表で確認します。

 

 

カウフマン療法は主に第2度無月経に対して行いますが、体重減少性無月経の場合は適正体重に戻すことがホルモン治療よりも優先されます。
また、第1度無月経でもカウフマン療法を行うこともあり、あくまでも患者様の症状やホルモン値などを考慮して治療方針を決定しています。