院長コラム

若年女性の続発性無月経に対する診察の目的

思春期女性は卵巣機能が未熟なため、月経不順になることが少なくありません。月経が不順であること自体は、ご本人の生活に直接影響を及ぼさないため、気にしないで放置される方も多いかと思います。
しかし、3か月以上月経がない続発性無月経の場合は、早めに婦人科を受診されることをお勧めします。
今回は、「基礎からわかる女性内分泌」(診断と治療社)などを参考に、若年女性の続発性無月経に対する診療の目的について説明致します。

 

目的1. 無月経の原因となる基礎疾患の有無を確認

続発性無月経には様々な原因がありますが、下垂体腫瘍や甲状腺機能異常などの基礎疾患もその一つです。これらの疾患は、それ自体が直接本人の健康を損ねる可能性があるため、脳神経外科や内分泌内科医など各専門医による精査・治療が必要になります。
また、摂食障害による体重減少も無月経の原因となりますが、摂食障害の治療には精神科医の診察が不可欠です。
無月経の診察を通じて、これらの基礎疾患の有無を確認することは、ご本人の健康・生命にとって非常に重要です。

 

目的2. エストロゲン低下による無月経以外の健康被害を早期発見

無月経の原因のひとつに、エストロゲンという女性ホルモンの分泌の低下が挙げられます。エストロゲンには骨密度を増加させる働きがあり、もしエストロゲンの分泌が少ないと、骨密度が低下し骨粗しょう症となり、骨折しやすくなってしまいます。実は、女性の骨量は20歳ごろピークを迎えるため、いかに思春期の間に骨量を増加させるかが、その後の人生にも大きく影響します。
また、エストロゲンは脂質代謝を調節し、血管を守る働きもあります。そのため、エストロゲン分泌が低下すると、脂質異常症や動脈硬化のリスクが高まります。
エストロゲンの分泌不良は骨や血管に悪影響をもたらすため、エストロゲンの分泌が少ない思春期女性に対して、エストロゲンを補うことは大変重要です。
このように、無月経の診察をすることで、エストロゲン低下による健康被害を早期に発見し、予防や治療に結びつけることができます。

 

目的3.  将来の妊娠のために環境作り

将来の妊娠のためには子宮の発育を促す必要がありますが、子宮の発育にはエストロゲンが欠かせません。子宮の重量に関する研究によると、子宮発育は主に10代後半にみられるため、この時期に十分なエストロゲン分泌が見られなければ子宮は小さいままとなります。
妊娠したい時に妊娠するためには、エストロゲン分泌が少ない思春期女性に対し、ホルモン剤でエストロゲンを補充する必要があります。
このように、将来の妊娠のためにも無月経の診察は有用です。

 

基礎疾患以外にも、思春期の激しいスポーツはエストロゲン低下の原因となることが知られています。
もし無月経となったら、婦人科の受診はもちろん、過度な運動習慣を見直すようにしましょう。