院長コラム

肥満と月経不順との密接な関連

前回は女性アスリートの低体重と無月経についてお話しましたが、今回は肥満と月経不順についてお話致します。

 

肥満と無排卵

肥満(BMI:体重(㎏)÷身長(m)÷身長(m)が25以上)の場合、卵胞から分泌される卵胞ホルモン(エストロゲン)はあまり低下しませんが、排卵しにくくなることで月経異常になるケースが多い傾向にあります。

特に、短期間(3~6ヶ月)に体重が増加(原体重の15~20%以上)すると、稀発月経(月経周期が35日以上)や無月経(月経が約3ヶ月以上ない)になりやすいといわれています。

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)とは?

肥満で月経異常を来たしている方で注意が必要な疾患に、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)があります。生殖年齢女性の5~8%に発症し、肥満のほか、多毛を伴うことがあります。排卵障害のため無月経になることが多いですが、エストロゲンは保たれていることが一般的です。

診断には各種血液検査や超音波検査が必要になります。超音波検査の所見として、両側卵巣に多数の小さな卵胞(卵子が入っている袋)が認められるのが特徴です。
また、肥満を伴うPCOSの場合、糖尿病を合併している可能性もあるため、糖代謝の精査をする事があります。

 

対策は?

肥満に伴う月経異常に対して、まず優先すべきは肥満に対する対応です。食事や運動などを通じてライフスタイルの改善を図る必要があります。肥満の改善だけで排卵が順調に認められ、月経周期も回復すること事も多く、目安として、2~6か月で5~10%の体重減少を目指します。

もし糖尿病も合併している場合には、内科医や栄養士の栄養指導を受け、必要があれば糖尿病薬などの薬物療法を行う場合もあります。

薬物治療は?

以上のような肥満への対応を進めながら、月経異常・排卵障害に対する治療も平行して行う事もあります。
すぐに妊娠を希望する場合には排卵を促す薬物療法が主体となります。
まだ妊娠を希望しない場合には、黄体ホルモン製剤を周期的に服用することで月経周期を整え、数ヶ月ごとに休薬期間を置いて、自然な排卵を期待する治療が一般的です。

やせすぎても、太りすぎても月経トラブルをきたします。
適切な運動習慣や食生活を継続し、BMIを18.5~25.0でキープしましょう。