院長コラム

「女性アスリート診療のための講習会」に参加しました

平昌オリンピックが始まり、連日熱戦が繰り広げられています。すでに日本選手、特に女性選手のメダルラッシュで盛り上がっていますが、女性アスリートのパフォーマンスと産婦人科医療とは、実は密接な関係があります。

今回、「女性アスリート診療のための講習会」に参加してきましたので、その一部ご報告致します。

 

女性アスリートを襲う、3つのトラブル

女性アスリート、特に10代から20代にかけての若年者は、「無月経(3ヶ月以上月経が無い状態)」をきたすことが少なくありません。それはなぜでしょうか?

原因のひとつは、「エネルギー不足」といわれています。食事から摂取するエネルギーより、日々のトレーニングで消費するエネルギーが上回った結果、エネルギー不足に陥ります。すると、女性ホルモンの調整機能に異常をきたし、卵巣から分泌されるエストロゲンという女性ホルモンが低下します。そのため排卵もせず、無月経となってしまいます。

さらに、エストロゲン低下が招く悲劇として、「骨粗しょう症」があります。実は、エストロゲンには骨密度を増加させる作用があるため、もしエストロゲンが低下すると、骨が溶けてしまい、骨粗しょう症になる可能性が高くなります。
そして、女性アスリートに認められる疲労骨折の主な原因として、骨粗しょう症が言われています。
また、エネルギー不足のため体重が減少すると、骨に対する負荷が軽くなり、そのことも骨粗しょう症の原因となっています。

以上のように、「エネルギー不足」「無月経」「骨粗しょう症」が、女性アスリートを襲う3つのトラブルであり、更にそれぞれが影響しあっています。

 

解決方法は?

まずは「エネルギー不足」を改善し、低体重から標準体重を目指します。BMI〔体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)〕:18.5以上が標準ですが、無月経や骨粗しょう症をきたすアスリートの中には、BMIが18.0に満たない方もいらっしゃいます。

体重増加させるためには、「摂取エネルギーを増やす」、つまり食事を見直すか、「消費エネルギーを減らす」、つまりトレーニング内容を見直す、ということになります。もちらん、私たち医療者が関われるのは、食事内容になります。

一般女性と同様、アスリートの方でも、体重を減少させるためには「炭水化物を極力減らす」という、誤った考え方が染み付いてしまっているようです。

まずは、炭水化物、つまりご飯やパン、麺類といった主食を必要な分量きちんと食べる事が大切です。

それでも体重増加が見られない場合は、ホルモン療法を併用することが検討されます。

 

10代の「ジュニア世代」こそ注意

20代アスリートを対象にした調査では、骨粗しょう症のアスリートでは、骨粗しょう症でないアスリートに比べて、10代で1年以上無月経であった例が多かった、との報告があります。

つまり、10代から食事内容、月経周期に気を付けないと、後に「エネルギー不足」「無月経」「骨粗しょう症」に悩まされる可能性が高まります。

 

10代から婦人科をかかりつけ医に

婦人科医がスポーツ医学に関わるようになってまだ日は浅いですが、様々な研修会を通じて診療レベルは向上しています。
是非、アスリートの方々は10代から産婦人科をかかりつけ医としましょう。
そして、女性ホルモン検査をしたり、基礎体温表を付けることで、ホルモン環境を確認することをお勧めします。

10代の方は婦人科受診に躊躇されるかもしれませんが、内診などの婦人科診察を必ずしもするとは限りません。
問診や血液検査が中心になると思いますので、お気軽に受診頂ければと思います。

このテーマについては、引き続き情報提供をして参ります。
ご参考にして頂きましたら幸いです。