院長コラム
片頭痛とエストロゲンの関係
片頭痛とは、発作性に起こる脈拍に一致した頭痛で、左右どちらかでみられることが多く、光や音の対しても過敏になることがあります。また、悪心や嘔吐を伴うこともあるため、生活の質を下げる厄介な病気です。
片頭痛は若い女性に起こることが多く、男性の2~3倍の頻度といわれており、約8人に1人の女性が経験するといわれています。
今回、片頭痛と女性ホルモンであるエストロゲンとの関係について、「エストロゲンと女性のヘルスケア」(武谷雄二東京大学名誉教授著 メジカルビュー社)の内容を基に、情報を共有したいと思います。
月経周期と片頭痛
月経痛で悩む女性の多くは初経以降に症状が出現し、約半数は月経と関連して起きているそうです。日常診療でも、月経開始前後や排卵期に片頭痛を訴える女性は少なくありません。月経周期におけるエストロゲン濃度を見てみると、月経時に最低となり、その後排卵に向けて増加しますが、排卵直前に一時的に減少します。排卵後、黄体という組織から黄体ホルモンとともにエストロゲンも分泌されるため再び増加しますが、妊娠が成立しない状況では急激に減少し、月経が始まります。
以上から、片頭痛をおこしやすい月経開始前後と排卵期は、エストロゲンが急速に減少している時期でもあります。
妊娠・産褥期および更年期と片頭痛
妊娠が成立すると、胎盤からエストロゲンが分泌し続けて増加しますが、分娩後は胎盤が排出されるため、エストロゲンは急激に減少します。片頭痛持ちの女性が妊娠すると片頭痛が改善・消失すると言われていますが、反対に産後は一か月以内に片頭痛が再発することが多いようです。
また、エストロゲンが減少する更年期の女性や、両側の卵巣を摘出された女性も片頭痛をきたすことが少なくありません。しかし、時間の経過とともに軽快することが知られています。
エストロゲンの急激な減少と片頭痛
以上のように、エストロゲンの急激な減少が片頭痛を誘発しますが、エストロゲンが一定のレベルで安定していると片頭痛は改善することが知られています。通常、経口避妊薬(OC)は21~24日間、エストロゲンを含むホルモン剤を服用し、4~7日間は休薬または偽薬を服用して出血を起こしています。しかし、休薬期はエストロゲンが急激に減少するため、片頭痛をきたすことがあります。一方、月経困難症治療薬として用いられるエストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP)は、できるだけ休薬期間を設けずに連続して服用する持続投与が、最近の主流となっています。そして持続投与の場合、エストロゲンの血中濃度が安定しているため、片頭痛をきたす方は減少するといわれています。
発作の前に目がチカチカするなどの前駆症状が見られる片頭痛の女性には、OC・LEPは禁忌ですが、前駆症状のない片頭痛持ちの女性月経困難症に対しては、LEPの連続投与(ヤーズフレックス錠、ジェミーナ錠)をお勧めします。
その他、当院における片頭痛に対する治療薬は、主に「アマージ錠」を用いています。