院長コラム
教職員対象の性教育講習会のご報告(1)
先日、東京都教育委員会からのご依頼があり、世田谷区内の某都立高校の教職員の先生方を対象に、思春期の性についてお話を致しました。
都内では、高校生対象の性教育を行なっている高校は増えてきましたが、学生の周りにいらっしゃる大人の方々にも思春期の性に関する正しい知識を知って頂くことは大変重要です。
今回は、講習会の前半部分の概略をご報告致します。
女性の性の基礎知識
8~9歳頃になると、エストロゲンの分泌が増加し始め、12歳頃での初経の後、エストロゲンの分泌は急増し、18歳頃になると安定します。その後、40歳頃まではエストロゲン分泌はおおむね横ばいで推移しますが、40歳代後半からエストロゲンは急速に減少し、50歳前後で低値となり閉経を迎えます。
高校の先生方が日頃接していらっしゃる15~18歳の女子は、このようにエストロゲンが急増する、不安定でデリケートな、とても大切な時期にいます。
月経に関連する心身の不調~月経困難症~
月経期間中に月経に随伴しておこる病的な症状を月経困難症といい、下腹部痛、腰痛、腹部膨満感、嘔気、頭痛、疲労・脱力感、食欲不振、いらいら、下痢、憂うつなどの症状みられます。
月経困難症には機能性と器質性の二種類ありますが、思春期など若年者の月経困難症は機能性が多く、子宮の過剰な収縮が原因といわれています。
思春期の月経困難症で主に用いられている治療は低用量エストロゲン・プロゲスチン配合剤(LEP)で、内膜を薄くさせる作用があります。子宮を収縮させるプロスタグランディン(PG)は子宮内膜から産生されるため、子宮内膜を薄くさせることでPGの産生が減少し、子宮収縮が緩和されて月経痛が軽快します。
月経に関連する心身の不調~月経前症候群(PMS)~
月経前3~10日の間続く、精神的あるいは身体的症状で、月経の発来とともに減退・消
失するものを月経前症候群(PMS)といいます。精神症状として、抑うつ、怒り、いらいら、不安、混乱、引きこもりなどがあり、これらの症状が悪化すると、月経前不快気分障害(PMDD)というPMSの重症型になります。
身体症状としては乳房痛、乳房の張り、腹部膨満感、頭痛、関節痛、筋肉痛、体重増加、手足のむくみといった症状を認めます。
また、PMSは40歳代以上に多いといわれていますが、実は思春期女性も少なくありません。ある報告によると、高校生の約12%がPMSやPMDDを理由に学校を欠席しているといわれています。更に社会人になってもPMSに悩まされ、職場や家族など周りの方にも理解されず、どんどん辛くなってしまうこともあるそうです。
PMSの原因はあまりよくわかっていませんが、排卵後の黄体から分泌される黄体ホルモンの影響や月経前の卵胞ホルモンと黄体ホルモンの急激な減少、セロトニンなどの神経伝達物質の関与、精神的・身体的ストレスが原因ではないかと考えられています。
治療には、加味逍遥散などの漢方薬を使用することも多いですが、月経困難症とPMSのどちらもみられる場合は、LEPを使用します。
当院では、LEP製剤の中でも、ヤーズフレックスを第一選択として処方しています。ヤーズフレックスは長期間(120日間)連続投与が可能であり、月経の回数が減るため月経困難症、PMSともに回数を減らすことができます。
また、ヤーズフレックスに含まれている黄体ホルモンは、男性ホルモン様の作用が少ないため、いらいら感や怒りっぽさを抑え、にきびの治療効果もあります。まさに思春期の月経困難症やPMSに適したLEPといえます。
今回の講習会では男性の先生方が多くいらっしゃいました。思春期女性の性について、男性の方々にも知って頂きたいと思っていましたので、大変良い機会となりました。
次回は講習会の後半部分をご報告致します。