院長コラム

当院の救命訓練について

先日、私と助産師1名が玉川産婦人科医会主催の母体救命講習会に参加してきました。その後、そこでの学びを他の当院スタッフ(受付スタッフ、栄養士も含めて)と共有するために、院内で救命訓練を開催しました。
本日はその訓練について報告させて頂きます。

 

 

心肺停止の判断と胸骨圧迫

まず、基本的な心肺停止の判断と胸骨圧迫の手技についてスタッフ皆で確認しました。

意識が不明な患者さんに対し鎖骨を叩きながら呼びかけを行い、反応の有無を確認します。反応がない場合、頬を患者さんの鼻・口に近づけて呼吸の有無を肌で確認し、同時に患者さんの胸が動いているか眼で確認します。

もし、通常の呼吸がなければ“心肺停止”と判断します。その際、あえて脈拍の状態を確認するための時間をとることはしません。心肺停止と判断したら、他のスタッフに救急車の手配と院内分娩室にあるAED(自動体外式除細動器)を持ってくるよう依頼します。

その後直ちに胸骨圧迫を始めます。ポイントは、胸骨下半分を、強く(約5cm、6cmを超えない)、早く(100~120回/分:プリンセスプリンセスの「ダイアモンド」のリズム)、絶え間なく(中断は10秒以内)行うことです。また、毎回の圧迫後は、完全に胸壁が元に位置に戻るように圧迫を解除しますが、圧迫の掌は胸壁から離れないようにすることが大切です。院内の訓練では、胸骨圧迫30回に対して、酸素流しながらバッグ・バルブ・マスクを用いた人口呼吸を2回行います。

尚、胸骨圧迫は結構疲れてきますので、約2分ごとに交代するようにします。

 

 

AED装着と注意点

AEDが届いたら電源を入れ、二枚のパッドを袋から取り出し、左側腹部と右胸部に張ります。AED装着の間も胸骨圧迫および人口呼吸は継続します。

装着後は心電図の自動解析が始まるため、解析中はAEDの指示に従い、胸骨圧迫および人口呼吸を一時中断して、全員患者さんから離れます。解析の結果、電気ショックが必要な場合はAEDの指示に従い、周囲の人が患者さんから離れていることを確認した上で電気ショックのボタンを押します。その後、胸骨圧迫と人口呼吸を再開します。

 

 

もし、入院中の妊婦さんが心肺停止になったら

当院の訓練では、陣発入院の妊婦さんが破水し、その後全身状態が悪化するという、羊水塞栓症を想定したシミュレーション訓練も行いました。

破水後、呼吸苦を訴えた患者さんに対して、担当助産師が自動血圧計・酸素飽和度モニターを装着し、他のスタッフ、院長を呼びます。酸素飽和度の低下が見られれば100%酸素10Lをマスクで投与します。

その後、妊婦さんの意識が消失し、自発呼吸が見られないときには、前述のように救急車とAED、救急セットを手配します。同時に胸骨圧迫・人口呼吸を行い、点滴で静脈路を確保し、全開で輸液します。また、アドレナリン1mgを3~5分毎に反復投与します。更に、母体の太い下大静脈を重石のように圧迫している妊娠子宮を左方に転位し、圧迫を解除します(胸骨圧迫による母体の循環を効果的にするため)。

尚、AEDを装着し、電気ショックを行う時には分娩監視装置を外す事を忘れないようにします。

 

                 

 

以上のように、スタッフ各自が一つひとつの行動を確認しつつ、チームとして連携がスムースにいくよう訓練を行いました。
妊婦さんの心肺停止というシチュエーションは非常に稀ではありますが、このようなケースを想定した訓練を行うことで、他の母体急変時にも皆が落ち着いて、その時その場で最善の初期対応ができるのでは、と考えています。
これからも定期的に、様々なシチュエーションを想定した救命訓練を行って参ります。