院長コラム

先天性風疹症候群の児の出産報道を受けて ~皆で妊婦さんを風疹から守る行動を~

2018年夏以降風疹が流行していますが、2月1日、先天性風疹症候群の児の出産が確認された、との報道がありました。2013~14年に風疹が大流行した際には45名の先天性風疹症候群が報告されましたが、わが国ではそれ以来の発生です。
この報道を受けて、日本産婦人科医会から「妊娠している方へ緊急のご通知 先天性風疹症候群の児の出産の報道について」という通知が出されました。
折しも2月4日は「風疹の日」。
本日は、風疹予防について再度情報提供致します。

 

 

先天性風疹症候群の症状

先天性心疾患、難聴、白内障が三大症状といわれています。その他、低出生体重・精神運動発達障害・血小板減少性紫斑病・肝脾腫・小眼球・小頭症・痙攣四肢麻痺など症状は多岐にわたり、中には永久的障害もあります。更に、症状が重症な場合、新生児期や乳児期に亡くなることもあります。

 

 

風疹抗体価が低い妊婦さんの方へ

風疹の抗体を持たない、あるいはHI抗体価が16倍以下の妊婦さんが妊娠20週までに風疹に感染すると、胎児にも感染し、出生児が先天性風疹症候群となる可能性が高くなります。

風疹の感染予防に最も有効なのはワクチン(MRワクチン;麻疹風疹ワクチン)ですが、残念ながら妊婦さんに接種することはできません。抗体価の低い妊婦さんは妊娠20週まで、できるだけ人混みは避けるようにしましょう。

尚、授乳中は接種可能ですので、忘れないうちに、分娩後速やかに接種することをお勧めします。

 

 

これから妊娠を考える女性の方へ

世田谷区では、MRワクチンの接種歴がない女性の抗体検査は助成対象となります。また、風疹抗体価が低い場合は、ワクチンについてもお一人につき1回まで助成対象となります。是非、妊娠する前に接種するようにしましょう。ちなみに、MRワクチン接種後の2か月は必ず避妊する様にして下さい。

 

 

30~50歳代の男性の方へ

男性の場合、30~50歳代の風疹抗体の陰性率が比較的高い(約20%)といわれています。このコラムをお読み頂いているのは女性であると思いますので、皆様のご主人、パートナー、兄弟、息子さん、お父さん、あるいは職場の男性職員などお知り合いの男性に、MRワクチンを積極的に接種してもらうよう、是非お伝え下さい。

ちなみに今年から期限付きで、昭和37年4月2日から昭和54年4月1日生まれの男性で、ワクチン未接種の方は、抗体検査やワクチン接種に関して全額助成の対象になるようです。詳しくは地元区役所・市役所へお問い合わせ下さい。

 

 

女性職員を抱える会社経営者の方へ

会社経営者の方の責任も重くなっており、職場の女性、特に妊婦さんに対しては厳重な保護対策を取らないといけない時代になってきました。

ほとんどの勤労者は、あまり症状が強くないと医療機関を受診せず、継続して出勤し、日常生活をおくっているのではないでしょうか。もし、発疹や発熱、頚部リンパ節の腫れなどがみられる職員がいましたら、たとえ軽微な症状であったとしても、必ず医療機関を受診させて下さい。はっきり診断がついて、感染の可能性がなくなるまでは、出勤をさせないようにしましょう。

もし、職場で風疹患者さんが発生した場合は、妊婦さんに対しても出社しないようにご指示し、風疹感染の可能性がある方々と妊婦さんを接触させないよう、ご注意下さい。

 

 

アメリカでは「妊婦さんは日本に行かないように」と通達されているようで、わが国における風疹の流行は、世界からも“悪い意味で”注目されています。
汚名を返上するためには、日本は風疹に関して後進国であることを皆が自覚し、主に風疹ウイルスを撒き散らしているかもしれない30~50歳代男性の意識改革が必要でしょう。
皆様のご家族、職場の男性で、MRワクチンを受けたことがない方には、是非、ワクチンの接種をお勧め頂きます様、何卒宜しくお願い申し上げます。