院長コラム
当院における新生児黄疸の対策
赤血球が壊れるとビリルビンという物質が産生されます。血清ビリルビン値が正常を超えて増加すると高ビリルビン血症となり、顔や体の皮膚が黄色く染まるようになります。新生児に認められる黄疸を新生児黄疸といい、生理的な黄疸と病的な黄疸に分けられます。
当院で認められる黄疸のほとんどは生理的黄疽で、自然に消えていきますます。しかし、ビリルビンが高値である場合、脳に影響を及ぼし、神経障害を引き起こす可能性があります。
この度、当院では新生児黄疸への対応をより速やかに行うため、新生児黄疸の対策を改定致しました。
今回は、新生児黄疸の一般的な説明に加えて、当院における新生児黄疸対策の一部を紹介致します。
生理的黄疽と病的黄疸
生理的黄疽は日齢4~6の間に見られることが多く、その理由として以下の要因が考えられます。
① 成人に比べて循環赤血球量が多く、赤血球の寿命が短いため、ピリルビンの産生量が亢進している。
② 肝臓における胆汁への排出機能が未熟である。
③ 哺乳量が少なく腸管蠕動が弱いと、腸管に排出されたビリルビンが再吸収されてしまう、など。
また、母乳不足による黄疸は生後1週間以内に現れることが多く、哺乳量や哺乳回数の不足により、ビリルビンの腸からの再吸収が増加することが要因といわれています。そのため、頻回授乳を促し、場合によっては人工乳の補足を考慮します。
一方、病的黄疸の代表的な原因は母子間の血液型不適合による溶血です。最も代表的で重要な血液型不適合は、母体が抗Rh(D)抗体陰性(いわゆるRhマイナス)のケースです。それ以外にも胎児・新生児溶血性疾患の原因になる不規則抗体が多数存在します。ちなみに、ABO式血液型で言えば、母親がO型、子どもがA型またはB型の時に溶血性黄疸になる可能性がありますが、程度も軽く頻度も多くありません。
溶血性黄疸は生理的黄疽と比べると、生後早期から出現するため、生後24時間以内に黄疸が著明になる場合は、速やかに診断と治療(光線療法・交換輸血・薬物療法など)を行う必要があります。
当院における黄疸管理
① 生後2時間のミノルタ黄疸計(経皮黄疸計)での測定
5mg/dl以上は異常であり、特に生後72時間までに急速な上昇が見られる時には近隣の高次施設(東京医療センター、国立成育医療研究センター、日赤医療センターなど)の新生児科へ新生児搬送致します。
② 1日1回ミノルタ黄疸計での測定
ミノルタで15mg/dl以上、または肉眼的に黄疸が強いときなど、血液検査でビリルビン値を測定します。
③ 基準値以上の場合は光線療法
光線療法により照射されたある波長の光エネルギーの影響で、皮膚や皮下組織に分布するビリルビンの分子が、胆汁中や尿中に排泄されやすくなります。
当院ではLEDを光源とした照射装置を使用しています。通常は保育器の中で管理していますが、母児同室もできるように、児の背部から照射するタイプの装置も併用しています。
原則24時間治療し、採血による血中ビリルビン値が3mg/dl以上の低下(あるいは出生5日後以降で血中ビリルビン値が18mg/dl以下)が見られれば光線療法を中断します。そして、24時間後に再検した結果、血中ビリルビン値がリバウンドで上昇しないかを確認します。
24時間の光線療法でも血中ビリルビン値が改善しない場合は、もう24時間継続します。生理的な新生児黄疸の場合、24~48時間の光線療法で多くは改善し、リバウンドで上昇することもほとんどありません。
④ 光線療法で改善しない時には、新生児搬送
当院での光線療法でも軽快しない場合や筋緊張低下・嗜眠傾向・吸啜反射減弱といった神経症状がみられる場合は、近隣の高次施設の新生児科へ転院(外来または救急搬送)となります。
当院ではリスクの少ない方の分娩を扱っていますが、難産や吸引分娩により赤ちゃんに頭血腫が生じた場合や、妊娠36週の後期早産児・2500g未満に低出生体重児など、黄疸をきたす赤ちゃんは時々いらっしゃいます。
これからも、新生児黄疸の速やかな診断と確実な対応を心がけて参ります。