院長コラム

妊婦さんの夏かぜ対策

蒸し暑い季節がやってきました。体調を崩しやすい時期のため、夏風邪にかかる妊婦さんが増えてきました。
今回は、風邪の妊婦さんに用いる薬剤について、「妊娠と授乳 改訂2版」(南山堂)、「周産期のくすり大事典」(メディカ出版)などを参考に説明します。

 

 

かぜ症候群の症状と治療目標

かぜ症候群には定まった診断基準はありませんが、一般的に鼻閉や鼻汁、くしゃみ、咽頭痛、咳嗽などを特徴とする軽微な上気道炎で、通常は7~10日目頃に自然寛解します。

原因のほとんどはウイルス感染であり、発熱、咳、鼻汁といった症状はウイルスに対する生体防御反応として生じているため、薬物療法が生体防御反応を抑制する可能性は否定できません。

治療に当たっては安静、保温、保湿、水分補給に留意した上で、日常生活に著しく支障が出るようであれば、対症療法として薬物を使用します。

特に妊婦さんは、免疫力が低下しているため病状が悪化しやすい反面、胎児への薬物の影響も考えないといけません。個々の体調や症状、生活への影響を総合的に考え、状況に応じて治療法を決定します。

 

 

《発熱・頭痛・咽頭痛に対して》

比較的安全に使用できる解熱消炎鎮痛剤「アセトアミニフェン(カロナール錠)」が第一選択です。ただし、妊娠28週以降の服用により胎児への影響も報告されているため、妊娠後期は特に注意して使用します。

また、漢方薬では感冒初期に3日間程度「葛根湯」を処方することもあります。

 

《咽頭炎に対して》

炎症を抑える効果を持つ「トランサミン錠」、うがい薬の「アズノール」を用います。

 

《咳嗽に対して》

当院では非麻酔性の「メジコン錠」「アスベリン錠」を第一選択で使用していますが、麻薬性の「フスコデ配合錠」なども、有益な場合であれば妊婦さんも使用可能です。

また、痰があまりみられない咳に対して、漢方薬の「麦門冬湯」を処方することもあります。

 

《喀痰に対して》

気道粘液修復薬の「ムコダイン錠」や気道潤滑薬の「ムコソルバン錠」、痰が多い咳の時は漢方薬の「清肺湯」を処方します。

 

《鼻汁・鼻閉感に対して》

水様性の鼻汁には「小青竜湯」、鼻閉感には「葛根湯加川キュウ辛夷」といった漢方薬を用います。

 

 

実際の臨床では、上記の薬剤を組み合わせて使用しています。
当院の場合、あまり症状が出現していない感冒の初期には「葛根湯」で経過観察し、それでも咳や痰が出現したら「メジコン・ムコダイン」、咽頭痛があれば「トランサミン」や「アズノール」、鼻汁があれば「小青竜湯」を処方し、頭痛があれば「カロナール」の屯服で対応しています。
もし、安静や水分補給だけで風邪の症状が回復しなければ、是非ご相談下さい。