院長コラム

妊娠中の排尿トラブル

妊娠中に頻尿や尿失禁を認めることは少なくありません。
今回は妊娠中の排尿トラブルについて説明します。

 

 

妊娠中の生理的な排尿トラブル

妊娠中期以降になると循環血流量が増加し、排出する尿量も増えます。さらに子宮が大きくなるにつれて、前方にある膀胱を圧迫するようになります。そのため、尿量が増えるにもかかわらず、膀胱の容積が小さくなるため、生理的に頻尿になります。

また、妊娠後期になると、ホルモンの影響により子宮や膀胱を支えている骨盤底筋が軟らかくなってきます。すると、尿道を閉める力が弱くなり、増大した子宮による膀胱圧迫も加わって、腹圧性尿失禁が生理的に認められるようになります。

 

 

注意が必要な排尿トラブル

前述のように、妊婦さんは生理的な頻尿をきたすことが少なくありませんが、排尿痛、尿混濁、残尿感など、他の症状が見られた場合は膀胱炎の可能性も否定できません。

妊娠中は膀胱炎から腎盂腎炎に移行しやすくなるため、早めの診断・治療が必要です。

診断は、妊婦健診の時のように尿を採取頂き、簡便法の尿一般検査で行います。尿中白血球、潜血、蛋白が陽性であれば尿路感染の可能性が高いため、妊娠中に服薬できる抗生剤(メイアクトなど)を1日3回4日間ほど服用して頂きます。同時に尿培養で、どのような細菌が原因であったかを検査します。

治療開始から約1週間後、尿一般検査で異常なく、自覚症状もおさまっていれば治療終了となります。

 

 

尿失禁と破水

妊娠後期になると、生理的な尿失禁がほとんどですが、破水と区別がつきづらいこともあります。

失禁が一過性のもので、尿の匂いがすれば尿失禁の可能性が高いと思いますが、ちょろちょろと尿漏れが続いたり、腹圧をかけない時でも失禁するようなことがあれば、破水の可能性も否定できません。

その場合は受診して頂き、破水かどうかを確認しましょう。

 

 

妊娠中の頻尿や尿失禁の多くは、必ずしも病的なものではありません。ただし、中には膀胱炎や破水が隠れていることもありますので、気になることがあればお早めにご来院下さい。