院長コラム

腫瘍マーカー:CA125が意味するものは

通常の婦人科診療だけでなく、人間ドックなどでも各種腫瘍マーカーを調べるケースが増えてきました。
今回は、婦人科領域で検査することの多い腫瘍マーカー、CA125について説明します。

 

 

腫瘍マーカーとは

腫瘍マーカーとは、がん組織などが産生する様々な物質で、血液などの体液中に存在します。中には各臓器に特徴的な物質もあるため、腫瘍マーカーをがんなどの診断や治療効果の判定などに用いることが一般的になっています。

 

 

CA125とは

CA125は代表的な腫瘍マーカーで、卵巣がん、肺がん、膵がんなどで高値を示し、子宮内膜症や骨盤内炎症などの良性の疾患でも基準値以上になることがあります。

ただし、上記疾患以外にも、月経中や妊娠初期には高値になるため、様々な条件を考慮して評価する必要があります。
 

 

当院でCA125を検査する場合

(1) 卵巣腫瘍が認められた場合

卵巣腫瘍と思われる画像が超音波検査で認められ、悪性所見の可能性が否定できない場合、CA125やその他の腫瘍マーカー(CA19-9、CEAなど)を検査します。

(2) 子宮内膜症が疑われた場合

子宮内膜の組織が子宮内腔以外のところで発生し、増殖する病気を子宮内膜症といいます。子宮内膜症の症状は月経痛、性交痛、慢性の下腹部痛などがあり、CA125が上昇する代表的な良性疾患です。

子宮内膜症性卵巣嚢腫を認めることも多く、特に40歳以上で子宮内膜症性卵巣嚢腫が4cm以上の場合は卵巣がんの鑑別に注意する必要があります。

また、腹腔内の子宮内膜症の進行状況は各種画像検査だけでは不明なことも多いため、CA125を参考に子宮内膜症性病変の程度や悪性の可能性を評価することはとても重要です。

 

 

CA125が高値のときの対応

子宮内膜症性卵巣嚢腫または悪性が否定できない卵巣腫瘍が認められた場合、腫瘍マーカーだけでなく、骨盤腔MRI検査を行います。それらの検査結果を総合的に評価して対応していきます。

(1) 悪性所見のない子宮内膜症性嚢腫・CA125:35U/ml以上100U/ml未満の場合

MRI検査で悪性所見が認められず、CA125が軽度高値の場合、子宮内膜症に対する治療(ホルモン治療など)を行い、定期的に画像検査・腫瘍マーカー検査などで経過観察します。 

(2)悪性所見が疑われる 卵巣腫瘍・CA125:100U/ml以上の場合

MRI検査で悪性の可能性が否定できず、CA125がかなり高値である場合、東京医療センターや大学病院など、婦人科腫瘍の治療に定評のある高次施設へ紹介します。

 

 

CA125は有用な腫瘍マーカーではありますが、初期の卵巣がんではほとんど上昇しないため、卵巣がんを早期発見する目的としてはあまり使用していません。
当院では、必要に応じて腫瘍マーカーを検査し、他の検査結果も踏まえて、おひとりお一人に合った治療方針を検討して参ります。