院長コラム
乾いた咳と湿った咳に対する漢方薬の使い分け
この季節、インフルエンザや感冒など、しつこい咳に悩まされている方も多いと思います。咳には乾いた咳(乾性咳嗽)と湿った咳(湿性咳嗽)の二種類がありますが、それぞれにあった薬剤を選ぶことが大切です。
今回は、乾性咳嗽に有効な「麦門冬湯」と湿性咳嗽に有効な「清肺湯」についてお伝えしたいと思います。
麦門冬湯について
○ 効能・効果
痰が切れにくい咳、気管支炎、気管支喘息が適応になります。また、体力中等度もしくはそれ以下の人で、発作性に激しい咳が頻発し、顔面が紅潮する場合に用いられます。
○ 主な薬理作用
① 鎮咳作用
咳を誘発する物質の分解を促進し、咳誘発物質自体の放出を抑制します。
また、気管支を拡張させる作用により咳を鎮めます。
② 抗炎症作用
様々な炎症物質の放出を抑制することで、炎症を防ぎます。
③ 去痰作用
気道の粘膜の粘液分泌を抑制し、水分布を正常化させることで気道の潤滑性を向上させ、気道上皮細胞の線毛運動を活発化させることで、異物の排出を促進します。
④ 気道の乾燥改善
気道上皮細胞の水透過性を回復させ、気道の乾燥を改善し潤いをもたせます。
○ 用法・用量
1日9gを2~3回に分割し、食前または食間に服薬して頂きます。
当院では妊婦さんや授乳婦さんに用いることが多く、西洋薬に抵抗がある方や、西洋薬の効果が不良の場合に1~2週間ほど処方することがあります。
清肺湯について
○ 効能・効果
痰の多く出る咳が対象であり、比較的体力が低下した人で、咳嗽が長引き咽頭痛、嗄声などを伴う場合の用いられるそうです。
○ 主な薬理作用
① 気道液分泌促進作用
気道液の分泌を促進し、潤いをもたせます。
② 去痰作用
気道の潤滑性を向上させ、粘液を溶かして痰の粘度を低下させます。また、痰の構造を断片化することや気道上皮細胞の線毛運動を活性化することで痰や異物を排出しやすくします。
③ 抗炎症作用
炎症物質の産生・分泌を抑制し、炎症を抑えます。
○ 用法。用量
1日9gを2~3回に分割し、食前または食間に服薬して頂きます。
当院ではあまり処方しませんが、妊婦さんや授乳婦さんに対して、西洋薬と併用することもあります。
乾性咳嗽と湿性咳嗽は、明確に区別することが困難な場合があり、病状の変化によっても痰の状態は変化します。
患者さんの症状にあわせて漢方薬の使い分けを考え、場合によっては西洋薬との併用も検討し、患者さんお一人おひとりに適した薬物療法を提供したいと考えています。